JStories―世界各地で地球温暖化に起因するとみられる気象関連災害が頻発し、私たちの暮らしや経済、産業活動などの脱炭素化を求める声がこれまで以上に強まってきた。しかし、世界規模の気温上昇が停止する気配はまだない。平均気温の上昇を産業革命前に比べて1.5度に抑えようという国際合意(パリ協定)にもかかわらず、直近の国連報告によると、数年以内にその水準を突破する恐れが出ているという。
社会の脱炭素化が進んでいない理由は様々だが、大きなハードルのひとつは、温暖化を引き起こす二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガス(GHG)について、排出量を正確に算定し、カーボンクレジット(脱炭素証書)の活用につなげるプロセスに膨大な手間と時間が必要になる点だ。
CO2の削減量を数値化し、売買を可能にするカーボンクレジットは、企業が自社の排出量を相殺する手段として活用されており、業務の脱炭素化をすすめる重要な対策になっている。しかし、業界ごとに数値化の基準や手法が異なるなど実務が複雑で、カーボンニュートラル(温室効果排出実質ゼロ)実現は簡単な話ではない。
CO2排出量をオンライン上で可視化
そうした中で、企業向けに商品やサービスのGHG排出量をオンライン上で算定し、最終的にカーボンクレジットを購入してカーボンニュートラルを実現するサービスが注目を集めている。
環境テック企業Sustineri(本社:東京都渋谷区、針生洋介代表取締役)が提供する温室効果ガス排出量の算定サービス「Susport」は、企業活動に伴うGHG排出量を細かく算定・可視化し、最終的にカーボンクレジットを購入してカーボンニュートラルを実現するまでをWeb上で完結できるプラットフォームだ。

同社は、気候変動に関わるコンサルタント出身で代表取締役を務める針生洋介さんが、「単なる助言にとどまらず、自らの知見を生かして直接社会に貢献したい」と考え、2021年に設立した。「当社のパーパスは『サステナブルな選択を日常に』。環境問題を考えることが、日常生活の中で当たり前になることを目指している」と同社執行役員の舩越洋平さんは語る。


気候変動対策の政策実施支援などに携わり2021年にSustineriを設立した代表取締役の針生洋介さん(左)と
執行役員の舩越洋平さん(右)
たとえば、私たちが日常的にオンラインで買い物をする際に、商品や輸送に関わるGHG排出量を自動で算定・可視化し、少額からカーボンオフセットを購入できれば、消費者も日常の中で自然と環境負荷を意識することができる。

建設業界向けを手始めにサービスを拡大、将来は海外展開も
企業のGHG対策強化を求める声は各地で高まっている。欧州では域外からの輸入品に対して炭素価格の負担を求める「炭素国境調整措置(CBAM)」などの法制度が導入されている。
日本でも今年度から、一定以上のCO2を排出する大企業を対象に、本格的な排出量取引制度(GX-ETS)への参加が義務づけられるようになった。また、仕入れ先に対しても、サプライチェーン全体のGHG排出量の把握と開示を求めるケースが増えており、こうした業務の可視化や簡素化は企業にとって一段と重要性を増している。
現在、Sustineriが特に力を入れているのが、建築業界に特化したサービス「Susport建設」だ。 建設業界はGHG排出量の割合が極めて高く、2028年には建物の生涯にわたる排出量の算定・届出が義務化される方向にある。だが、算定方法の難しさやデータの膨大さから、どのような対策を取ればいいのかわからないと戸惑うケースも多い。
たとえば、日本の建設業界では資材の型番などが非常に細かく設定されており、それに基づいて計算するだけでも困難を極めるという。そこで同サービスでは、複雑で難解な見積書をAIで読み取るだけで細かく分けられた型番などを整理し、材料や工事から排出されるCO2を自動で計算。さらに、コンサルタントとして低炭素素材の提案や、カーボンオフセットの実行までを一貫して支援する。個別の事業構造に対応した細やかなアプローチが評価され、すでに多数の企業との取引実績を積み重ねている。

同社は今後、Susport建設を主軸として、他業界へも特化型サービスを拡張していく方針だ。また近い将来には、日本での実績をもとに、各国・各業界に対応したシステムを構築し、東南アジアやアフリカをはじめとする海外市場への展開も視野に入れているという。カーボンオフセットのクレジット供給源としても、同地域にアプローチしたい考えだ。
「私自身、商社勤務時代にアフリカで脱炭素問題に直面し、地球規模での対応が不可欠だと身をもって痛感しました。世界中の誰もが当たり前に環境負荷を意識し、行動を選択できる社会を作っていきたいと考えています」と舩越さんは話している。
記事:嵯峨崎文香 | JStories
編集:北松克朗 | JStories
トップ写真: Envato
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