大阪 ── 台湾・国家発展委員会(NDC)が推進するスタートアップ支援の国家ブランド「Startup Island TAIWAN(SIT)」と阪急阪神不動産は8月17日、スタートアップ支援での連携に向けた覚書(MOU)を締結した。署名式は、日本最大の私鉄ターミナルである阪急大阪梅田駅構内の招待会員制イベントスペース「NORIBA10 umeda」で開かれた。相互の企業紹介、イベントの共同実施、そして関西と台湾それぞれでの進出支援を柱とする内容で、台湾のスタートアップ・エコシステムが、関西の大手私鉄グループ中核企業と常設の協力枠組みを持つのは初めてとなる。
台湾の新興企業はこれまでも関西との往来を重ねてきた。足りなかったのは、進出の足がかりとなる常設の「入口」だ。今回の覚書は、その空白を埋める。

覚書そのものは簡潔だ。協業や投資、共同研究開発、実証実験(PoC)に適した企業・スタートアップを互いに紹介し合い、ビジネスにつながるイベントも共同で実施する。肝心なのは「どちらが、どこで、何を担うか」である。阪急阪神不動産は関西——覚書上は大阪から滋賀まで2府4県——で会場と企業への扉を開き、SITは逆方向に向かう企業、すなわち日本のスタートアップの台湾進出を自らのネットワークで支える。この「入口」は、両側に開く扉なのだ。
受け皿はすでに動いている。阪急阪神不動産は大阪・梅田で、国内外のスタートアップ向けワークプレイス「FutureWorks」、イベントや実証実験の場となる「NORIBA10 umeda」、大学・支援機関・関西企業をつなぐネットワーク「JAMBASE」を運営する。鉄道、商業、ホテル、情報通信にまたがるグループ事業は、今後、沿線での実証プロジェクトにつながる可能性を持つ。
葉俊顯・NDC主任委員(台湾政府の閣僚)は「今回のMOUは台日スタートアップ連携の重要なマイルストーンであり、台湾と関西地域が長期的な産業パートナーシップを築く新たな出発点だ」と述べ、阪急阪神グループが大阪・京都・神戸に持つ産業ネットワークを通じて、台湾スタートアップの日本市場開拓を後押しする考えを示した。

阪急阪神不動産の福井康樹社長は、大阪・梅田を「新たな価値を生み出し続ける国際交流拠点」と位置づける同社の「梅田ビジョン」に言及。今回の連携は台湾のイノベーション・エコシステムとの結びつきを深めるものだとし、台湾の活力あるスタートアップが大阪・関西に進出し、地元の事業会社や投資家とのネットワークを広げていくことに期待を寄せた。
同日には、2024年に上場した台湾のDX企業、騰雲科技(Turn Cloud Technology Service)と、阪急阪神グループのIT企業アイテック阪急阪神も覚書を締結。百貨店や商業施設をはじめとする流通・小売分野で、スマートコマースやスマート施設運営、AIソリューションの展開を共同で検討する。
一連の署名は、2023年以降の積み重ねの上にある。SITは2023年、台湾スタートアップの大阪への引率を始め、市場開拓と現地企業・イノベーション資源との接続を進めてきた。2024年には「Go Kansai Alliance(関西進出アライアンス)」を発足。台湾のベンチャーキャピタル、アクセラレーター、インキュベーター、業界団体を束ね、個社を一社ずつ支援する方式から、パートナー各社が自らの投資先・育成先・支援先を関西へ連れて行く「集団方式」へと転換した。
2025年にはアライアンスの結集力で大阪・関西万博の公式催事認定を獲得し、40社を超える台湾スタートアップがNORIBA10 umedaでの展示・交流・商談に集まった。そして今回の阪急阪神不動産との連携は、その次の段階にあたる。プロジェクト単位の協業は、関西の大手企業・行政・商工会議所・投資ネットワークと台湾のイノベーション・エコシステムをつなぐ長期プラットフォームへと進化した。台湾スタートアップは個社としてではなく、エコシステムとして日本に入る。
成果も出始めている。次世代シーケンサーによるメタゲノム解析で、感染症の病原体特定を従来の1〜2週間から1日に短縮する亞洲準譯(Asia Pathogenomics)は、上場準備段階(プレIPO)にある有力企業だ。東京・日本橋に日本法人を設立し、今年5月には大阪大学病院との共同研究成果を発表した。フィンテック、フードテック、ヘルスケアの分野では、神戸や京都に進出した台湾スタートアップもある。
今回の訪日団にはAIスタートアップ17社が同行し、台湾・数位発展部数位産業署の林俊秀署長も参加。会場には日台からおよそ100人が集まった。
大阪セッションを皮切りに開幕した「2026 日本・台湾イノベーションサミット」は、8月18〜19日、会場を東京へ移した。スローガンは「Together, Go Big」。今年で5回目を迎えたサミットには米国政府の技術政策担当者も初めて登壇し、日台の枠組みは太平洋の対岸へと広がり始めている。
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阪急阪神不動産は、梅田に鉄道網が集まる阪急阪神ホールディングスの不動産中核企業。鉄道会社が自らのターミナルを起点に百貨店やオフィス、ホテルを建て、街ごと育てていく――日本の私鉄経営の古典的なモデルを、百年余りにわたって梅田で体現してきたグループだ。
その梅田は、駅を中心に広がる西日本最大のビジネス拠点だ。会場名の「NORIBA10」には意味が込められている。阪急大阪梅田駅のホームは9号線まで。「10番目ののりば」は、まだ存在しない出発ホーム――これから生まれる挑戦のために空けてある乗り場である。次にそこから発車するのは、台北行きかもしれないし、梅田行きかもしれない。
本記事はStartup Island TAIWANとのパートナーシップにより制作・掲載されました。








