PROBLEM:
猛暑が懸念される北中米W杯で日本代表が初戦を終えたが、空調の効いた会場に恵まれた今回と違い、屋外会場での熱中症リスクは大会を通じて世界的な懸念であり続けている(国内でも熱中症は毎夏深刻化)。SOLUTION:
錠剤を飲み込まず、皮膚に貼って深部体温をリアルタイムで推定する非侵襲ウェアラブル。自転車ロードレースなど持久系競技で普及が進む技術で、スイスのグリーンテグが手がける「CORE」はその代表例。
サッカーのワールドカップ(W杯)で、日本代表は15日(日本時間)、1次リーグF組の初戦で優勝候補のオランダと対戦し、2度のビハインドを追いついて2―2で引き分けた。試合は屋根付きで空調を備えたダラスの競技場で行われ、選手は猛暑の直撃を免れた。だが、その恩恵を受けられない屋外会場が大半を占める。
気候団体や選手会は、選手が深刻な熱ストレスにさらされる危険性を繰り返し警告してきた。今大会は史上屈指の暑さになるとの見方もあり、ダラスやヒューストン、マイアミ、メキシコの各会場はとりわけ蒸し暑くなるとみられる。FIFAは条件次第で各ハーフに給水・冷却の時間を設ける措置を導入したが、屋外型や開放型の会場が多く、完全に空調化できるのはダラス、ヒューストン、アトランタの3会場にとどまる。日本の第2戦(21日)は、暑さで知られるメキシコ・モンテレイで予定される。
こうした課題の一助となりうるのが、スイス・チューリヒ近郊の企業グリーンテグ(greenteg)が手がける深部体温センサー「CORE」だ。同社はスイス連邦工科大学(ETH)系の技術を基に2009年に創業し、2019年にスポーツ向けのCOREを立ち上げた。皮膚に貼り付ける小型のウェアラブルで、錠剤を飲み込む従来の方法と異なり、皮膚温や熱流束、心拍などのデータから深部体温をリアルタイムで推定する。

これまでの主な実績は、持久系競技にある。プロ自転車ロードレースでは、INEOSやボラ・ハンスグローエなど複数のワールドツアーチームと公式に契約し、同社はプロ選手の最大3分の2が暑熱順化トレーニングに使っていると説明する。トップ選手のタデイ・ポガチャル陣営は、契約を結ばずに自費で導入しているほどだ。同社は今月、2026年の猛暑シーズンに向けた新モデルも発表した。サッカーのW杯代表での採用は確認されていないが、持久系競技で磨かれた技術が、猛暑下のチームスポーツへ広がるかどうかが注目される。

ただし、これだけで問題が解決するわけではない。COREは深部体温を直接測るのではなく推定する仕組みで、第三者による検証研究では、体温が高くなる領域で飲み込み式の基準値との一致が「不十分」と報告された例もある。FIFAの冷却ブレークや医療体制に取って代わるものでもない。
それでも、日本にとって無縁の話ではない。国内でも熱中症による救急搬送や死亡が毎夏深刻さを増しており、飲み込まずに連続して測れる非侵襲の技術は、トップ競技の枠を超えて、屋外で働く人や高齢者など暑さに弱い人々の見守りにも応用できる可能性を秘めている。
ニュースの核心
最新の動き: グリーンテグは2009年にスイス連邦工科大学(ETH)系のベンチャーとして創業した。CORE のセンサー技術は10件を超える臨床研究で検証されたとされ、今月には2026年シーズンに向けた限定モデルも発表した。 一方、第三者による検証研究では、体温が高くなる領域で、飲み込み式の基準値との一致が「不十分」と報告された例もある。
市場規模: スポーツ向けウェアラブル市場は、2026年に約980億ドル規模に達すると推計される(Mordor Intelligence)。ただし、深部体温の計測に特化した分野の規模は、まだ確かなデータが乏しい。
業界の動き: 主な競合は、飲み込み式の体温計だ。米HQ社の「CorTemp」はNASAの技術を起源とし、仏ボディキャップ社の「e-Celsius」なども広く使われている。COREは、身体を傷つけない装着型ウェアラブルとして、これらとの違いを打ち出している。
今後の課題: COREは深部体温を直接測るのではなく推定する仕組みで、高温域での精度には議論がある 。 価格の問題もあり、FIFAの冷却ブレークや医療体制に取って代わるものではない。あくまで対策の一つという位置づけだ。
未来への期待: 身体を傷つけずに連続して測れるという特長は、トップ競技の枠を超えて、屋外で働く人や高齢者など暑さに弱い人々の見守りへと広がる可能性を持つ。同社の熱流束センサーは、JAXAの補給機で国際宇宙ステーションへ運ばれた実績もある。
トップ写真:CORE公式サイト( https://corebodytemp.com/ )より引用
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