[PODCAST] 成功するスタートアップコミュニティの作り方 (Part3)

In partnership with Disrupting Japan

16時間前
BY DISRUPTING JAPAN/TIM ROMERO
[PODCAST] 成功するスタートアップコミュニティの作り方 (Part3)
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JStoriesでは、革新的な取り組みを行う日本のスタートアップを英語でインタビューする人気ポッドキャスト番組 [Disrupting JAPAN]とのコンテンツ提携の下、同番組が配信している興味深いエピソードを日本語で紹介しています。以下にご紹介するのは、CIC(ケンブリッジ・イノベーション・センター)の創業者兼CEOであり、スタートアップエコシステムの牽引役として活躍しているティム・ロウさんとのインタビューで、6回に分けて記事をお届けします。
*このインタビューは2025年4月に配信されました。
本編(英語版ポッドキャスト)は、こちらで聴取可能です。
Disrupting Japan:Disrupting Japanは、Google for Startups Japan の代表で東京を拠点に活動するイノベーター、作家、起業家であるティム・ロメロ氏が運営するポッドキャスト番組(英語)。ティム氏が数年後には有名ブランドになるポテンシャルがあると見出したイノベーティブな日本のスタートアップ企業をピックアップして、世界に紹介している
Disrupting Japan:Disrupting Japanは、Google for Startups Japan の代表で東京を拠点に活動するイノベーター、作家、起業家であるティム・ロメロ氏が運営するポッドキャスト番組(英語)。ティム氏が数年後には有名ブランドになるポテンシャルがあると見出したイノベーティブな日本のスタートアップ企業をピックアップして、世界に紹介している
Disrupting Japan の創立者で自ら番組ホストも務めるティム・ロメロ氏
Disrupting Japan の創立者で自ら番組ホストも務めるティム・ロメロ氏

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2025年2月に行われた、起業家やイノベーターが集う国際的ネットワーク「Venture Café Tokyo」のイベントで、米ケンブリッジ・イノベーション・センター(CIC)の創業者兼CEOであるティム・ロウさんと対談する機会がありました。今回は、その対談内容をそのままお届けします。
ロウさんをこの番組に初めてお迎えしたのは2017年のことで、当時はまだCICが日本に進出する前でした。その際、私たちは日本におけるスタートアップイノベーションの未来について語り合いました。
今回の対談では、あのときの予測はどれくらい当たっていたのか、予想外だったことは何か、そしてこれから日本のスタートアップがどこへ向かっていくのかについてお話ししています。
とても興味深い内容になっていますので、ぜひお楽しみください。
※CICは、米マサチューセッツ州ケンブリッジ発のグローバルなスタートアップ支援組織で、2018年に日本法人(CIC Japan)が設立された。2020年には、主にスタートアップ向けのワークスペースやコミュニティ、各種サービスを提供するCIC Tokyoが東京都港区虎ノ門に開設。また、Venture Café TokyoはCIC Japanの姉妹団体として運営されている。
(全6回シリーズの3回目。第2回目の配信・Part2 はこちらでご覧になれます。)

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世界中で行われているイノベーション支援の取り組み

CICの創業者兼CEOであるティム・ロウさん    写真提供:西日本鉄道
CICの創業者兼CEOであるティム・ロウさん    写真提供:西日本鉄道
(前回の続き)
ティム・ロメロ(インタビューアー、以下ロメロ):(過去10年の日本のスタートアップエコシステムの変化をみると)日本政府の示したリーダーシップやスタートアップを重視する姿勢、そして各業界との連携を促進する力が、確かに大きな影響を与えたと言えるでしょう。
ただ、政府の関与や支援に関しては、「シリコンバレーのようなIT企業の集積地をつくりたい」というプロジェクトは世界中で数多くありますが、スタートアップを支援するコミュニティ作りは非常に難しく、ほとんどの場合、思い通りには成功していません。
これまで世界中で成功例や失敗例を見てきた中で、成功するコミュニティには共通する要素があるとすれば、それは何でしょうか?また、特に初期段階で「これは可能性がある」と感じる要素には、どんなものがありますか?
ティム・ロウ(以下、ロウ):良い質問ですね。私たちCICやVenture Caféは政策について話すこともありますが、実際に政策を作っているわけではありません。私たちはイノベーションの現場にいて、スタートアップ支援を実践している立場にあります。そして、同じような活動をしている多くの団体と連携する中で、イノベーションエコシステム(イノベーションが生まれやすい環境)を改善できる、とてもシンプルな取り組みがあることがわかりました。
例えば、マサチューセッツ工科大学(MIT)が実施している「地域起業家加速プログラム(MIT REAP)」という取り組みがあります。これは日本国内や世界中で展開されている研修プログラムで、地域のイノベーションエコシステムを強化するために必要な施策に焦点を当てています。また、英国には「高等研究発明局(ARIA)」という研究開発の助成機関があり、ハイリスク・ハイリターンな研究への資金投入という新しい支援モデルを提供しています。このように、イノベーションエコシステムを支援しているのは私たちだけでなく、本当に面白い仕事をしている人々が世界中にいるわけです。

イノベーションの鍵は協力と連携

写真提供:Envato
写真提供:Envato
私たちが見つけたのは、非常にシンプルなことです。どの都市にも、一定の「イノベーション能力」があり、その「能力」は例えば、研究者がどれだけ革新的な仕事をしているか、起業家がどれだけ経験を積んでいるか、投資家がどれだけリスクを伴う資本を提供できるか、といった要素を基に評価することができます。これらの要素は都市のイノベーションの基盤を作り、その後の成長や発展の土台となるのですが、その変化はゆっくりとしたものになります。
一方で、すでに持っている要素を「うまく組み合わせる」ことは比較的短期間でできることですが、正しい方法で組み合わせる必要があります。例えるならケーキ作りのようなもので、小麦粉や砂糖、水、卵などの材料をただ混ぜてオーブンに入れただけではケーキはできないからです。
起業の世界で言えば、投資家はリスクを取って起業家を支援し、起業家は研究者のアイデアの可能性を理解し、そして研究者は自分の技術がどのように人々の役に立つのかを考える必要があります。多くの研究者は非常に優秀ですが、学んだことを社会に活かす意欲が必ずしも高いわけではありません。もっとその意欲や意識が高まって欲しいと思っています。これまで、歴史を見ても「協力や連携」がイノベーションにとって重要だとは、あまり考えられてこなかったのです。
先週、私は英ケンブリッジ大学を訪れました。世界でも有数の研究機関ですが、今、非常に力を入れて「研究室のアイデアをどう企業に生かし、それを仕事や製品に結びつけるか」を進めています。そんな変化が実際に起きているのを目にし、その広がりを感じるのは、非常に刺激的です。
この「協力や連携を促す取り組み」が、まさにVenture Caféの役割です。私たちは数あるグループの一つに過ぎませんが、スキルや関心を持った人々を集め、交流の場を提供し、出会いを生み出しています。これを私たちは「Gathering(ギャザリング、集まり)」と呼んでいます。基本的な信頼関係を築くことは実は難しくありません。人々は、一定時間、同じ空間に滞在すると、自然と会話が始まり、お互いを知るようになり、信頼が化学反応のように生まれます。その結果、「一緒に会社を立ち上げよう」という段階に進むことができるのです。
(第4回に続く)
第4回では、イノベーションエコシステムにおける協力や連携の構築方法、そして顧客をエコシステムに組み込む重要性についてお話しします。
[このコンテンツは、東京を拠点とするスタートアップポッドキャストDisrupting Japanとのパートナーシップにより提供されています。 ポッドキャストはDisrupting Japanのウェブサイトをご覧ください]
翻訳:藤川華子 | JStories
編集:北松克朗  | JStories 
トップ写真:Envato 提供

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本記事の英語版は、こちらからご覧になれます
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