コメからのプラスチック バイオマスプラスチックの未来

日本のバイオマスプラスチック企業、環境と農業を結ぶ

11月 10, 2023
BY Takanori Isshiki
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J-STORIES ー 石油資源からのみ作られていたプラスチックが植物などの再生可能資源を使った「バイオマスプラスチック」に代替が進んでいる。バイオマスプラスチックは、石油由来のプラスチックと違い枯渇の心配もなく、CO2の排出量を減らすことが可能だ。
バイオマスレジンを使用した製品作成プロセス     バイオマスレジンホールディングス 提供
こうした「バイオマス」の原料として従来多く使われてきたのはサトウキビやトウモロコシだが、日本人の主食である米から作る独自のプラスチックを開発、コメ作りの活性化と社会貢献を共に進めている企業がある。
カラフルに色付けをされたライスレジン樹脂     バイオマスレジンホールディングス 提供
カラフルに色付けをされたライスレジン樹脂     バイオマスレジンホールディングス 提供
元商社マンの神谷雄仁さんが立ち上げたベンチャー企業、バイオマスレジンHD(東京都千代田区)。代表取締役CEOの神谷さんは食品商社に勤務していたころ、視察で訪れた米国で、穀物メジャーが次世代への新事業としてトウモロコシからプラスチックを作っていたことをヒントに、国内で生産された米を使ったプラスチック(ライスレジン)のビジネスを思いついた。
ライスレジン樹脂     バイオマスレジンホールディングス 提供
ライスレジン樹脂     バイオマスレジンホールディングス 提供
「廃棄されるお米を活用し再生商品で社会や環境に貢献したい」という思いから、神谷さんはバイオマスの原料として廃棄される古米や破砕米など”不要な”コメを使用している。しかし、2007年に前身の会社を企業した際には、技術への評価は高かったものの、環境に配慮した製品に対する市場のニーズがまだ少なく、なかなか事業が安定せず、「3年に1度は心が折れていた」と振り返る。
その後は、米作り農家やプラスチック成型メーカーなど他業種に携わる人々と積極的に連携をとり、事業を継続するためのアイデアを懸命に考えたという。
ライスレジンのもととなるコメの稲     バイオマスレジンホールディングス 提供
ライスレジンのもととなるコメの稲     バイオマスレジンホールディングス 提供
「農業従事者の高齢化が問題になる半面、農業を志す若い人たちも増えている。次世代の農業が活性化するよう、新しい農業のビジネスモデルを作りたい」と考えた神谷さんは、その一歩として米どころ新潟で2017年、バイオマスレジン南魚沼を設立。現地の廃棄米を使い、自社工場での製造をスタートした。
バイオマスプラスチックは米を最大70%使用し、石油系プラスチックの含有量を大幅に下げているが、従来のプラスチックと比べて、コスト、成形性、強度、どれをとっても同等の品質を持つという。一般的にはレジ袋や、使い捨ての食器などに使われるが、同社の製品は、他にも赤ちゃんのおもちゃやアメニティグッズ、化粧品ボトルなど様々な用途に使用されている。
食器などのテーブルウェア「ほわり」(左)ライスレジンから作られたおもちゃ「OKOMEIRO」(右)     バイオマスレジンホールディングス提供
食器などのテーブルウェア「ほわり」(左)ライスレジンから作られたおもちゃ「OKOMEIRO」(右)     バイオマスレジンホールディングス提供
また2021年には三井物産プラスチックとも業務提携し販路を拡大。吉野家ではライスレジンのレジ袋を一部導入、モスバーガーではフォーク、スプーンが導入されるなど、飲食店での活用事例も増えている。
 バイオマスプラスチック「ライスレジン®」を配合した吉野家のテイクアウト用レジ袋     吉野家 提供
 バイオマスプラスチック「ライスレジン®」を配合した吉野家のテイクアウト用レジ袋     吉野家 提供
ライスレジン製 レジ袋     バイオマスレジンホールディングス 提供
ライスレジン製 レジ袋     バイオマスレジンホールディングス 提供
一方、同社は、廃棄米の再利用だけではなく、地域の活性化の一環として原料となる米の生産拡大にも乗り出している。日本国内で増加する休耕田や耕作放棄地を活用し、バイオマスの原料となる工業米を栽培する取り組みで、福島県浪江町では、昨年、こうした工業米を使用する生産工場も完成し、稼働を開始した。今年は、北海道のJAひがしかわやモスファーム熊本など、全国20か所程度とビジネスパートナーとしての実施検討を進めており、3年以内に全国の休耕田などを活用した作付けを300haまで拡大する予定だという。
バイオマスレジン福島工場     バイオマスレジンホールディングス 提供
バイオマスレジン福島工場     バイオマスレジンホールディングス 提供
また同社のプラスチックは、副資材メーカーコバオリが開発する植物由来の革製品の一つである「ライスレザー」の原料として採用された。2023年4月には、環境に配慮したものづくりを続けるバッグブランド「FUMIKODA(フミコダ)」の新製品である財布の原材料の一つとして、同社のライスレザーが採用されている。
ライスレザー製お財布     バイオマスレジンホールディングス 提供
ライスレザー製お財布     バイオマスレジンホールディングス 提供
日本政府は、脱炭素政策を進めるため、環境省などが主導して2030年までにバイオマスプラスチック約200万トンの利用をめざす計画だ。
同社はバイオマスだけでなく、微生物などの働きで最終的に二酸化炭素と水にまで分解する生分解性プラスチックにも取り組んでおり、京都大学と共同で米由来の「ネオリザ」も開発。タイ、ベトナムに拠点を設け、アジアやアフリカを中心に国際展開するという。
「ゴミ処理問題に求められる期待値が高い地域では、生分解性プラスチックが主役になる。現地で生産した米がゴミ問題解決のアプローチになることを願っている」と神谷さんは話している。
記事:嵯峨崎文香 編集:北松克朗
アップデート編集:一色崇典
トップ写真:バイオマスレジンホールディングス提供
この記事に関するお問い合わせは、jstories@pacificbridge.jp にお寄せください。

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