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測量、農業、インフラ点検から防衛まで、ドローンで社会課題を解決

ドローン活用の急拡大を見据え、「空のデジタルインフラ」構築も

Hiroko Ishi by Hiroko Ishi
06/08/2026
in Mobility, News-ja, Social Impact, Society
0
Home AI Mobility
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JStories ― 戦時下のウクライナで現地企業に出資し、低コストかつ迅速に展開可能な迎撃ドローンの量産化を支援していることで国際的な注目を集めているTerra Drone(東京都渋谷区、代表:徳重 徹氏)は、ドローン技術を軸に、測量・災害復旧、点検、農業、防衛など多様な分野で事業を展開するスタートアップだ。世界各地で社会課題の解決をめざすサービスをめざし、近年はドローンの運航を管理する「空のインフラ」構築にも力を入れている。

「ドローンは単なる最先端技術ではない」。そう語るのは、同社運航管理事業部マネージャーの龍 子洋(リュウ・カズヒロ)さんだ。なぜ同社はドローンを技術ではなく社会課題解決の手段と位置づけるのか。その背景と未来像を聞いた。

運航管理事業部マネージャーの龍 子洋(リュウ・カズヒロ)さん 写真提供:Terra Drone
暮らしへの様々な脅威にドローンで挑む

テラドローンの事業は大きく2つに分かれる。ドローンを活用したソリューション提供と、それを支える運航管理システムの開発だ。前者が様々なドローン技術の開発、後者はそうした技術を社会実装のための基盤づくりにあたる。

「将来、空に多数のドローンが飛び交う世界を実現するには、安全かつ効率的に運航を管理する仕組みが不可欠。機体が増えるほど、衝突や落下といったリスクは高まり、その分、リアルタイムで運航を制御、調整する仕組みの重要性が増していく。私たちはそのインフラをつくろうとしている」と龍さんは話す。

同社は世界が直面する複合的な社会課題に対し、ドローンがその解決策になると指摘する。日本も含め、世界の多くの地域で、インフラの老朽化、物流の逼迫、そして深刻化する人手不足は人々の暮らしにとって大きな脅威になりつつある。

例えば、水道管や橋梁、ダムなどの点検など、これまで人が担ってきた危険な作業は、今後ますます担い手が減っていく傾向にある。すでに同社は高精度の測量を短時間で行いたい、危険な現場での測量を安全に実現したい、などのニーズに対応、自社開発のUAVレーザ「Terra Lidar」のハード・ソフト販売とそれらを用いたサービスを全国47都道府県で展開している。

また、インドネシアやマレーシアなど世界各地で同社のドローンが農薬散布を担い、作業効率の向上だけでなく、労働環境の改善にも寄与し、持続的な農業の実現に貢献している。ドローンは単なる効率化ツールではない。「人だけでは対応が困難な領域」を補完する存在へと進化しつつある。

畑の上空を飛行する農業用ドローン(イメージ写真) 写真提供:Envato

こうした産業ドローンの展開に加え、同社は今春、迎撃ドローンの開発・製造 を行うウクライナ企業2社との提携・出資契約を相次いで発表した。厳しい実運用環境実戦でドローン技術・運用知見を培ってきたウクライナ企業との連携を進める。日本や欧州などへの将来的な海外展開も視野に、信頼性の高い迎撃ドローンの量産を急ぐ。

徳重社長は同社の発表の中で「(中東などの戦闘における)無人機の応酬は、自爆型ドローン等の脅威を無力化する防衛ドローンの確保が、国際社会の安全保障にとって最優先課題であることを示している」と指摘。「ウクライナ2社との提携の中で検証された信頼性の高いソリューションを世界へ供給し、国際社会の安定と抑止力の向上に貢献していく」と述べている。

ドローンの急増に備えた運航管理システム

ドローンの社会実装を推進するうえでハードルになっているのは、「運用の制約」という問題だ。現状の日本では、「1人の操縦者が1機を操作する」という前提が基本となっている。この状態では、ドローンを増やしても人手不足の解決には直結しない。そこで重要になるのが、UTM(運航管理システム)である。自動運航や複数機の同時運用、目視外飛行を実現するには、同一エリア全体を安全に管理する仕組みが必要であり、UTMはそのためのデジタルインフラだという。

ドローンの自動運航や複数機の同時運用、目視外飛行を実現するためには、各ドローンの同一エリア内における安全な運航管理を実現するUTM(運航管理システム)が不可欠である。 写真提供:Terra Drone(以下同様)

特に日本で導入ニーズが高まるのは、人口減少が進む地方や離島、中山間地域だ。「免許返納を目前に控えた高齢者が、危険を避けるために自らハンドルを握るのではなく、必要な物資をドローンで取り寄せる。そんな光景も、近い将来当たり前になるかもしれない」と龍さんは指摘する。

例えば、医薬品を迅速に届けるドローン配送、山間部への生活物資の輸送、インフラ点検の遠隔化など、こうした領域ではドローンの価値は都市部以上に大きい。UTMは直接的に課題を解決するわけではない。しかし、ドローンが安全に使える環境を整えることで、結果的に社会課題の解決を支えることができる。

一方で、この領域には明確なジレンマがある。社会的な必要性が高い一方で、収益化までに時間がかかる点だ。ドローンの数が少ないうちは、UTMの必要性も限定的だからである。龍さんは「1機しか飛んでいない空域では管理システムは不要。しかし10機、100機と増えるほど、その価値は急激に高まる」と話す。

つまり、UTMは導入時よりも普及が進んだ後にその価値が広がってくるインフラと言える。そのためテラドローンは、短期的な利益追求ではなく、市場そのものの立ち上げに注力している。政府当局との連携、制度設計への関与、海外での実装経験やその教訓などの情報蓄積などだ。特に欧州を中心に事業展開する子会社ユニフライの存在は大きい。すでに複数国でUTMの導入、運用実績を持ち、その知見が日本での実装に活かされている。「今は収益を最大化する段階ではなく、社会実装を前に進めるフェーズだと考えている」と龍さんは語る。

ドローンのUTMが社会にとって不可欠なインフラになるのは、ドローンの普及数と利用頻度の拡大が大きなカギとなる。ドローンが日常的に使われるようになると、空域の混雑が社会問題として顕在化し、運航管理へのニーズが一気に高まる可能性がある。

運航管理システムの画面。ドローンの高度、速度、バッテリー残量などの情報や飛行ルートなどをリアルタイムで把握できる。※開発中のため写真はイメージ。
ドローン活用の社会基盤、世界的にまだ模索段階

しかし、そのための社会基盤の整備はいまだ十分とは言い難い。大きな問題は、UTMの維持、管理をするためのコスト負担を誰が担うのかという点だ。運航事業者が負担するのか、国家インフラとして整備されるのか、利用者が対価を支払うのか。この構造は世界的にも模索段階にある。ただ一つ言えるのは、必要性が社会に認識された瞬間に、一気にインフラ化が進む可能性がある。それはインターネットやGPSの普及プロセスにも通じるという。

テラドローンが描く未来はドローンが日常的に空を行き交い、測量、点検、農業、物流、防災など、あらゆる産業の現場が自動化・無人化されていく社会。例えば、注文すれば必要な物資が空から届き、危険な作業は無人化される。空には多様なモビリティが共存する。「将来的には、ドローンだけでなく、空飛ぶクルマなども同じ空域を共有する時代が来ると考えている」と龍さんは話す。

運航管理システム(UTM)に搭載される主な機能の例。

2024年から2033年にかけて、世界のドローン市場は年平均33%の成長率で拡大し、約2400億ドル規模に達すると予測されている。これに伴い、UTM市場も同期間において年平均22%の成長が見込まれ、約60億8,200万ドル規模へと拡大する見通しだ(注)。ドローン市場の急成長に伴い、UTMの重要性は今後さらに高まっていくとみられる。

(注)アーサー・ディ・リトル・ジャパン株式会社による「UTM(ドローン運航管理システム)グローバル市場調査プロジェクト成果物資料(最終報告書)」(2024)より。この報告書はSMBC日興証券株式会社の依頼により作成された。

 

記事:石井広子 | JStories

編集:北松克朗 | JStories

トップ写真: Terra Drone 提供

この記事に関するお問い合わせは、jstories@pacificbridge.jp にお寄せください。

Tags: Digital InfrastructuredroneDrone DeliveryInnovationJapan TechStartupsTechnologyTerra Drone
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