本屋の「副店長」はChatGPT、おすすめの本を瞬時に紹介

書店運営をAIで刷新、将来は労務管理や発注にも活用

6月 1, 2023
by Ruiko kokubun
本屋の「副店長」はChatGPT、おすすめの本を瞬時に紹介
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J-STORIES ― 生成AI(人工知能)のChatGPTが「副店長」を務め、来店客とさまざまなやりとりをする異色の書店が今年4月、東京・蔵前に登場した。
本を探すのに書名や著者を特定する必要はなく、こんな本が欲しいという漠然とした質問するだけで「副店長」が人間の店員と同じように応対する。アナログ作業が多いリアルの書店ビジネスをAIの力で新しい形に変えようという試みだ。
「透明書店」と名付けた新店舗の運営会社は、クラウド会計ソフトなどの事務管理サービスを手がけるfreee(フリー、本社:東京都品川区、佐々木大輔社長)の100%子会社だ。「透明」と名付けたのは、売り上げなど経営状態を公開することで、小規模な事業所やフリーランスなどスモールビジネスに携わる人たちに参考にしてほしいという思いがある、と同書店の共同代表・岩見俊介さんはいう。
店舗のある蔵前は、米ニューヨークのイーストリバー沿いに広がるブルックリン地区になぞらえて、「東京のブルックリン」と呼ばれることもある。隅田川が流れ、昔ながらの職人気質を受け継ぐ中小企業が多くある一方、都心に近く、クリエーターらが集う街にもなりつつある。
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店内には約3000冊を陳列。絵本やエッセイなど個性的な本も並ぶ。&nbsp; &nbsp; &nbsp;透明書店 提供
店内には約3000冊を陳列。絵本やエッセイなど個性的な本も並ぶ。     透明書店 提供
約70平方㍍の店内には、エッセイや小説、絵本や漫画など約3000冊が並び、中小企業関連の本も目立つ。店長は遠井大輔さんが務めるが、接客は同社がChat GPTをベースに独自開発したAIの「くらげ」が活躍する。
入り口に置かれた縦型ディスプレーを通じて「落ち込んでいる時にお勧めの本は?」などと質問すると、くらげが在庫データを調べ、気分に合ったお勧めの本を即座に紹介してくれる。客の側が自分の年齢や趣味などといった細かな情報を入力する必要はない。あいまいな質問にも回答できるChat GPTの特性を生かしているという。さらに同社のAI技術開発者が、店にある3000冊の在庫データと紐づけた。
IT企業であるフリーが本業とは縁遠いと思われる書店の運営に乗り出したのはなぜか。目的のひとつはAIを経営に活用する新技術の検証だ。
「将来的には、スタッフの労務管理や書籍の発注、AIを用いた経営支援に応用させることが目標」と岩見さんは説明する。会計業務にどこまでAIを取り入れられるかという実験も検討している。
経営状態などを「透明」にしたいという思いが込められている。&nbsp; &nbsp; &nbsp;透明書店 提供
経営状態などを「透明」にしたいという思いが込められている。     透明書店 提供
また、スモールビジネスを始めることで、中小企業などのユーザーが感じている問題を洗い出そうという狙いもある。フリーが上場し、社員1,000人規模の企業へと拡大する中で、「(中小の)ユーザー企業が抱える課題の把握が難しくなっていた」と岩見さんは言う。
透明書店の運営は、書店経営を効率化する新しいツールの開発だけでなく、フリーによる業務支援サービス全体の強化にも役立つという判断だ。
 「書店はリアルの在庫を抱え、多くの種類の本を発注する。紙やファックスなどアナログな手法が使われることも多く、テクノロジーを導入する余地が大きいと考えている」と岩見さんはいう。
記者発表会で書店の狙いを説明する岩見俊介さん(写真奥の右側 )。&nbsp; &nbsp; &nbsp;透明書店 提供
記者発表会で書店の狙いを説明する岩見俊介さん(写真奥の右側 )。     透明書店 提供
透明書店は単体での黒字化を目指し、日々の売り上げ目標に対する達成率を公開しているが、まだ収益化はできていない。光熱費や人件費、家賃などの費用を考えると、本の販売だけで利益を出すことはハードルが高い。岩見さんは「書店でのイベント開催や、物販などで書籍の販売以外の収益柱も模索したい」と話している。
記事:国分瑠衣子 編集:北松克朗
トップ写真:透明書店提供
この記事に関するお問い合わせは、jstories@pacificbridge.jp にお寄せください。

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