アジア初の「水平型宇宙港」実現へ

大分で年内打ち上げを準備

7月 20, 2022
bu yui sawada
アジア初の「水平型宇宙港」実現へ
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 J-STORIES ― 小型衛星搭載の宇宙ロケットを飛行機で空に運び、そのまま空中で発射する「水平型」の打ち上げが、年内に大分空港(大分県国東市)で予定されている。実現すれば、大分空港はアジア初の「水平型対応の宇宙港」となる。
計画では、特別仕様のボーイング747ジャンボジェット機の下腹部にロケットを装着、離陸後に水平方向に切り離す。水平型ロケットは地上から発射する垂直型と違って、天候に左右されにくく、ロケット噴射による発射場の損傷もないなどの利点がある。 
大分県ではアジア初の成功を機に、関連産業の育成や観光開発など地域活性化を進めたい考えだ。
ロケットは水平型ロケット打ち上げ用に改良されたボーイング747に搭載され、高度1万メートルで切り離される。     Virgin Orbit/Greg Robinson より
ロケットは水平型ロケット打ち上げ用に改良されたボーイング747に搭載され、高度1万メートルで切り離される。     Virgin Orbit/Greg Robinson より
大分空港が水平型宇宙港の候補に選ばれたのは、ボーイング747の離着陸に必要となる3000メートルの長さの滑走路があることや、ロケットや人工衛星の点検や整備にも活用できる自動車や鉄鋼、精密機械などの産業がバランス良く県内に集積していることなどが主な理由だ。
そのきっかけを作ったのは、日本での宇宙港建設や関連事業の振興を支援する団体「スペースポートジャパン」(代表理事は宇宙飛行士の山崎直子氏)。米ニューメキシコ州で水平型ロケットを打ち上げた実績のある​​米国の宇宙開発企業、ヴァージン・オービットにアジアでの宇宙港として大分県を推薦した。大分県は同社とパートナーシップを結んでいる。
これとは別に、同県は今年2月、米シエラ・スペース(Sierra Space)、大手商社の兼松と組み、大分空港をシエラ・スペースの有人宇宙往還機Dream Chaserのアジア拠点として活用を検討すると発表した。大分空港を同機の着陸用の宇宙港として使用する計画を進めている。
現在、日本では北海道、福井県、茨城県、福岡県など、複数の地方自治体が宇宙開発事業を地元経済の振興策として打ち出している。日本政府も内閣府や経済産業省を通じて支援には積極的だ。
ただ、インフラ整備など自治体側が取り組むべき課題は少なくない。大分空港を宇宙港として使う上で解決すべき点のひとつは、各地からのアクセスの改善だ。現在、空港への公共交通サービスとしてはバス移動しか選択肢が無く、大分市中心部にある大分駅から空港までは、間に広がる別府湾を超えなければならず、1時間ほどかかる。
大分県は解決策として、かつて湾を横断する移動手段として運行されていたホーバークラフトを復活させることにした。別府湾を横断できれば陸路で遠回りせずに済み、所要時間は約30分間、バス利用時のおよそ2分の1に短縮される。
ホーバークラフトは運行事業社やターミナルの建築業者などがすでに決まっており、2023年度中に運行する予定だ。 大分県 提供
ホーバークラフトは運行事業社やターミナルの建築業者などがすでに決まっており、2023年度中に運行する予定だ。 大分県 提供
大分県では、打ち上げを始めた後の5年間で、県内には約102億円の経済効果が期待できると試算している。打ち上げ施設の運営効果が約31億円、建設投資効果が約15億円、観光・消費効果が約56億円、などがその内訳だ。
大分県庁で宇宙開発振興班の総括役を務める堀政博さんは、大分に宇宙港を実現することで、将来、宇宙でビジネスがしたい、宇宙で暮らしたいという声が上がった時に、その夢を実現するフィールドを提供できるような場所として貢献したい、とJ-Storiesの取材に対して話している。
記事:澤田祐衣 編集:北松克朗 
トップ写真:Virgin Orbit より
この記事に関するお問い合わせは、 jstories@pacificbridge.jp にお寄せください。

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上記の記事の内容は、動画リポート(英語)でもお伝えしています。

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本記事の英語版は、こちらからご覧になれます。


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