J-STORIES ー 無添加の石けんづくりを進めている福岡県北九州市の石けんメーカー、シャボン玉石けんが、環境に優しい新たな泡消火剤を開発、世界の森林火災などに役立てようとしている。
泡消火剤は水だけの消火作業よりも少ない水量で消火を可能にするが、広く普及している海外製などの泡消火剤は合成界面活性剤を使っているため、水の泡が消えずに河川に流れ出たり、自然環境に残留したりする問題が指摘されている。泡が残りやすいため、現場の消火活動に支障が出ることもある。
シャボン玉石けんは、1995年に起きた阪神淡路大震災での教訓を活かし、少ない水量で早く消火でき、環境への負荷も少ない「石けん系泡消火剤」を開発。地元の北九州市消防局とともに、取り壊し予定の6階建てアパートを実際に火災現場にして行った実験では、使用する水量が17分の1で済むことを実証した。消火活動で生じる他の階への水濡れや破損もなかったという。
石油や天然油脂から作られる合成洗剤ではなく、牛脂・パーム油・米ぬか油など天然油脂や脂肪酸から作られる無添加石けんを使った消火剤は環境にも優しいという特徴を踏まえ、同社は林野火災向け製品について産学官の共同研究も続けている。さらに、2013年には泥炭火災の被害に悩むインドネシアを支援する日本の国際開発機構(JICA)プロジェクトとして、現地で産官学協力の調査を実施、2015年に泥炭火災用泡消火剤を同国に出荷した。
現在、同社は、森林火災による二酸化炭素(CO2)の排出や微小粒子状物質(PM2.5)などの環境問題に悩まされているタイ北部での実証実験を準備している。同社開発担当の川原貴佳さんは、J-Storiesの取材に対し、今年中には現地での試験を行いたいと語った。
今後、海外への事業展開をしていく中で課題となるのは、それぞれの対象地域の特性に合わせた製品のカスタマイズだ。他の製品に比べ、無添加石けん由来の消火剤は価格が高くなり、より安く提供することが求められる。現地の水の性質に合った発泡性を持つ消火剤の開発も必要になるという。
水量を節約し、環境にも優しい無添加石けんの泡消火剤は今後さらに需要が広がると同社はみる。まだ、計画できる段階ではないが、「将来的には現地生産もできるようにしていきたい」と川原さんは話している。
記事:澤田祐衣 編集:北松克朗
トップ写真:dolgachov/Envato
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