JStories ―生成AIの急速な普及に伴って、大量の偽・誤情報やフェイク画像や動画が世界各地で拡散している。社会の信頼や安定を揺るがしかねないリスクが高まる中、国境を越えた協力が必要との危機感から、世界の100を超す企業や組織が様々な分野で協力しようという国際連携が動き出そうとしている。
その取りまとめ役となっているのは、日本の大手IT企業の富士通だ。同社は2025年、AIによる偽・誤情報対策や法規制の整備といった課題に取り組む国際コンソーシアム「Frontria」を発足させた。
富士通はこれまでにも、偽情報対策やAIとセキュリティの分野において、先端技術の研究開発を進めてきた実績がある。2024年には、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の公募による「偽情報分析に係る技術の開発」でプライム事業者に選定され、国内の産学連携組織と共同で偽情報対策プラットフォームの開発を進めている。
しかし、偽・誤情報の拡散リスクを食い止めるには、国内だけの対策では不十分だ。そうした情報は瞬時に世界を駆け回り、社会の分断や経済的損失など大きな影響を引き起こすからだ。
「この状況を解決するには国際的な協調と共同技術開発が不可欠だという強い思いから、Frontriaを立ち上げるに至った」と語るのは、富士通研究所シニアリサーチマネージャーの新田泉さんだ。
「世界中の多様な知見と技術を集約することで、当社の技術を単なるツールとしてだけではなく、国際社会全体の情報インフラを支える基盤技術へと昇華させ、より強固な情報環境を築き上げたい。今年度中に、当社の偽情報検出技術などを活用したハッカソンやワークショップも計画している」(新田さん)
国際的な協力が不可欠となる中で、日本企業が先陣を切って取り組む意義は大きいという。
「AI技術の発展によるリスクへの考え方は、地域によって異なる。例えば欧州では人権尊重や法規制などを重視しており、北米ではイノベーションと安全保障のバランスを模索、アジア諸国では人口の急速な増加を考慮に入れている。AI倫理と国際協調を重視する日本の立ち位置は、異なる地域の考え方をつなぎ国際的な対話を促す上で重要な役割を担うことができると考えている」(新田さん)
日本、欧州、北米、インド、オーストラリアなど世界中から50以上の団体が参画して発足したが、その後、国内外からの反響を受け、現在は約70にまで拡大している。参画団体が一同に会し、活用アイデアについて議論するなどの活動をすでに開始し、今後は保険、金融、報道、エンタメ分野を中心にさらに議論を深める予定だ。2026年度中には参画組織を100以上に拡大し、コンソーシアムから具体的なIPビジネス事例を創出することを目標に掲げる。
「Frontriaは、偽情報というグローバル課題に対し、国境を越えた知の連携で挑む開かれたプラットフォーム。信頼できる情報社会の未来を創造するために、より多くの団体にこの取り組みに共感し、パートナーとして参加していただきたい」と新田さんは国際連携の拡大を期待している。
記事:嵯峨崎文香 | JStories
編集:北松克朗 | JStories
トップ写真: Envato 提供
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