J-STORIES ー アポロ計画以来、およそ半世紀ぶりに人類が月面着陸するというアルテミス計画が進行中だ。NASAの主導で、JAXAを含む各国の宇宙機関が参加するこの国際プロジェクトは、2025年に宇宙飛行士が月面に降り立つことを目標とし、その第一段階として11月に打ち上げられた無人宇宙船オリオンが12月に無事帰還した。
人類が月面に暮らすための技術開発も、すでに様々なプロジェクトが動き出している。内閣府では2020年度から宇宙開発利用加速化戦略プログラム(スターダストプログラム)を進め、その一環である国土交通省の「宇宙無人建設革新技術開発推進事業」では、現在13件の技術研究開発が進み、月面施設を無人で建設する技術の開発を目指している。
人類が月面に定住するためには、酸素や水の供給、放射線や温度の管理など様々な課題があるが、とりわけ大きな問題は重力の確保だ。地球上とは異なり、月の低重力下では、筋肉や骨密度などに悪影響が出ることが明らかになっているが、長期生活を送る際には、さらに出産や子どもの成長などにも重大な影響があると懸念される。
ルナグラスは天体での重力に回転による遠心力を加えることで地球環境と同等の重力を発生させる仕組み。グラスを回転させると遠心力で中の液体がグラスに沿ってせり上がってくるように、回転によってできた仮想重力が描く形はまるでワイングラスのようになる。
その内側にできた居住空間では、地球と同じよう過ごすことができるとされる。ルナグラスの内部に森林や海洋を整備し、地球の生態系をできるだけ再現することも目指す。
この仕組みは他の天体にも応用することが可能で、月と並んで移住構想の進む火星上の人工重力施設「マーズグラス」も同時に研究されている。天体の環境によって「グラス」の形状は変わり、それぞれ天体特有の形になるという。
こうした宇宙でのまちづくりに向けて、独自の研究開発に取り組む国内大手ゼネコンは多い。たとえば、静止軌道上にステーションを設置、地球と宇宙をケーブルをつなげて輸送手段とする宇宙エレベーターは各国で研究が進められているが、日本では大林組が積極的に取り組んでいる。
記事:嵯峨崎文香 編集:北松克朗
トップ写真:savagerus/Envato
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