[インタビュー] ウクライナ首都キーウで情報発信を続けるボグダン・パルホメンコさん「復興支援のために期待する日本の役割」

ウクライナの復興支援のために日本の技術は役に立つのか?

6月 16, 2023
By Toshi Maeda
[インタビュー] ウクライナ首都キーウで情報発信を続けるボグダン・パルホメンコさん「復興支援のために期待する日本の役割」
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シリーズ: J-STORIES1周年
ESGやSDGsの推進に向け、日本企業や研究機関、スタートアップなどが様々な分野で進めている革新的な取り組みを世界の視聴者やジャーナリスト、投資家に伝える国際ニュースサービスJ-STORIES。J-STORIESでは、1周年を記念して、さまざまな著名人に日本発のソリューションが持つポテンシャルについて話を伺います。
J-STORIES ― 流暢な日本語を使ってウクライナの首都キーウからの生の情報を日本に向けて発信しているボグダン・パルホメンコさん。ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以来、自らの心境や葛藤、被害の状況、そして家族や友人のことなど、身の回りで現実として起きている多くのことをYouTubeなどで赤裸々に語ってきた。日本とウクライナの「架け橋」的存在であるボグダンさんは、自らが育った国「日本」が母国・ウクライナに対してできることを、どのように考えているのだろうか?
※このインタビューはJ-STORIESがTwitterスペースで主催する音声配信「世界のニュース」で5月25日付にて収録されました。全編版はこちらでご覧にいただけます。
ボグダン・パルホメンコ氏 1986年ウクライナのドニプロ生まれ。1990年に母親と来日、中学を卒業後、ウクライナに戻り、大学院卒業。学生時代から日本メディアの通訳・コーディネーターを担当し、大学卒業後は大手商社など勤務後、現在はSEPA LLCを設立。日本や他国の製品を扱う貿易会社を経営する一方で、日本とウクライナの架け橋となるべくYoutubeなどで積極的に情報発信を行っている。  写真は本人提供
ボグダン・パルホメンコ氏 1986年ウクライナのドニプロ生まれ。1990年に母親と来日、中学を卒業後、ウクライナに戻り、大学院卒業。学生時代から日本メディアの通訳・コーディネーターを担当し、大学卒業後は大手商社など勤務後、現在はSEPA LLCを設立。日本や他国の製品を扱う貿易会社を経営する一方で、日本とウクライナの架け橋となるべくYoutubeなどで積極的に情報発信を行っている。  写真は本人提供


現在も激しい戦闘が続くウクライナの首都キーウから日本に情報発信を続けるボグダンさんは、J-STORIESの取材に対し、現在続いている激しい戦闘がある程度収束した後、日本が企業やスタートアップなどが誇る技術力を使って、電気や水などのインフラ、生活に必要な最低限の環境をまず整える復興事業において力を発揮していただきたいと期待感を示した。
特に日本のスタートアップに期待するのは、戦争で激しく汚染された生活環境を元通りにするための日本企業ならではの優れた技術や、アイデアだという。
「今回の戦争で水や環境が汚染されています。春を過ぎて暖かくなってきたので自分の家の窓を洗っていると、窓にはぎっしりとドローンの狙撃やミサイルによる破壊でできた、石油やプラスチックのような、黒い炭のようなものがぎっしりと付いていて、なかなか洗っても取れないんです」
「そのようなものは僕らの窓だけでなく、周囲の森林部分にも見られますし、僕らの肺にも入っていると考えられます。ですので、このようなもの(残留物)綺麗に除去する必要があります」
ウクライナの環境汚染については、国連環境計画(UNEP)が、昨年10月にまとめた報告書で「ウクライナは、複合的かつ多面的な環境危機に直面している。既存の問題が悪化し、新たな問題が加わっている。環境と人への被害を拡大させないためには、現在進行中の紛争を今すぐ終結させることが不可欠で、紛争後も、有害な遺産を背負わされる危険性がある」と発表している。
現地にて支援物資を提供するボグダンさんたち。     ボグダン ・パルホメンコさん 提供 
現地にて支援物資を提供するボグダンさんたち。     ボグダン ・パルホメンコさん 提供 
さらに日本の建築技術も、多くの協力を期待される部分だと言う。
多くの道路が破壊されているウクライナで、道路の修復に質の高い日本の土木・建築技術が大いに必要とされるだけでなく、将来の有事の際に役立つシェルター付きの住宅の建設ができる日本企業が現れると、そのニーズも高いのではないかとボグダンさんは予想する。
「イスラエルのように家の中の一部屋がシェルターのようになっている構造の住宅を日本の企業がどれだけ建築できるか分かりませんが、ただ建築の技術は世界でも日本がナンバーワンだと思いますので、そのような新しい住宅、ミサイル・ドローン攻撃にも耐えられるような住宅、というものがあると助かります」とボグダンさん。
「ウクライナでも戦争前でも、地下(施設)、地下鉄、地下街などはある程度発展はしましたが、日本の技術をもっと応用して、何が地上で起きていても地下に一度潜ってしまえば、そこで何ヶ月も安全な生活(ができる)住宅があれば助かると思います。その分野で日本にもっと協力してほしいと、強く、強く感じます」
先日起きたヘルソンでのダム崩壊に関するボグダンさんのコメント。     BOGDAN in Ukraine より
また電力に関しても、クリーンエネルギーの技術支援などで日本の貢献に期待したいという。
「電気の方はウクライナは比較的大きな容量を作っている国です。今まで輸出していたくらいですから。自分の国の中で必要な電気よりも2倍くらい生産できるように(なっている)。しかしそれは全て核(原子力発電)によって作られてきたものなので、やっぱりそのようなものをよりエコなものに変えていくというのは必要になると思います」とボグダンさん。
一方、将来、戦後の復興が進めば、ウクライナは以前のように肥沃な大地を持つ輸出国に再び転じ、日本や世界が必要とする食料や電力などを供給できる国に戻ることができるだろうとボグダンさんは期待する。
「ギブアンドテイクという訳ではありませんが、ウクライナの国土はとても肥沃で豊かなので、そのようなところで農作業もできるし、ヨーロッパへの貿易の後押しもできる。また、ウクライナは平野なので、そのような場所でソーラー(太陽光)発電で電気を作り、それを日本などに輸出することで、日本の役に立ち、日本を強くすることができるのではないかと思います」
記事:前田利継
編集:一色崇典
トップ写真:ボグダン ・パルホメンコさん 提供
この記事に関するお問い合わせは、jstories@pacificbridge.jp にお寄せください。
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