廃棄野菜からつくる食用シート

フードロス解消へ世界展開も構想

7月 28, 2022
by yui sawada
廃棄野菜からつくる食用シート
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J-STORIES ー 証券会社のトップセールスマンだった長崎県平戸市の早田圭介さんが家業を引き継いだ後、20年余りの苦しい歳月をかけて自ら開発した「野菜シート」(商品名ベジート)が、現在は海外でも注目を集める製品に成長している。
そのままでは廃棄されかねない規格外の野菜を厚さ0.1ミリのシートに加工したベジートは、サラダを巻いたり、おにぎりを包んだり、と様々な活用法があり、料理に手軽な彩りを与えてくれる。
お湯にもすぐ溶けるやわらかい舌触りなので、野菜嫌いの子供や固いものを噛めない高齢者も抵抗なく食べられる。さらに、市場では売れない野菜を活用できるため、いま大きな問題になっているフードロス(食品廃棄)をなくす有効な手段にもなり得る。
べジートは添加物を一切使わずに野菜本来の味や色味を再現している。     アイル 提供
べジートは添加物を一切使わずに野菜本来の味や色味を再現している。     アイル 提供
早田さんが経営する会社、アイルが2010年に米ニューヨークでの展示会に出展した際は、3日間で予想を超す2700人が試食、180社が同社ブースを訪れる成果をあげた。今年6月の同展示会でも注目度は大きく、「世界小売ランキングベスト5に入るCostco(コストコ)、Kroger(クローガー)や穀物メジャーのADMとの接点ができた」(同社コメント)という。
今年6月12日から14日の3日間、ニューヨークで開かれた食品展示会「Summer Fancy Food Show 2022」でベジートのコーナーを見る参加者たち。     アイル 提供
今年6月12日から14日の3日間、ニューヨークで開かれた食品展示会「Summer Fancy Food Show 2022」でベジートのコーナーを見る参加者たち。     アイル 提供
証券会社を退社した後、ベジートを軌道に乗せるまでの日々は順風満帆とは程遠かった。資金が不足して、一時は体重が20キロ減少、3週間も入院したことがあった、と早田さんはメディアのインタビューで話している。その経験を通じって、お金儲け第一だった証券会社時代とは人生観が大きく変わり、いまは「皆さんが笑顔になってくれることが、わたしの“儲け”だと考えるようになった」という。
早田さんによると、海苔のシートを作る機械からスタートしたベジート事業は、大学との協力による技術開発を重ねて特許もとっている。現在は人参、大根、かぼちゃ、トマト、ほうれん草、紫芋の6種類の野菜を原料としたシートをつくっており、国内では現在、国内最大手の100円均一ショップであるダイソーや、イオングループが国内で展開するフランス発のオーガニック専門店、ビオセボン・ジャパン(Bio c’ bon)から引き合いがある。
べジートに使用される農家から購入した規格外の人参。規格外野菜は農家の人が喜んでくれる価格で買うことを第一に考え、生産原価で購入。     アイル 提供
べジートに使用される農家から購入した規格外の人参。規格外野菜は農家の人が喜んでくれる価格で買うことを第一に考え、生産原価で購入。     アイル 提供
新たな事業展開として、早田さんが期待しているのは、世界市場への進出だ。J-Storiesの取材に対し、早田さんは、長崎県内で行なっていたベジート生産を国内では岐阜、海外ではインドネシア・ロンボク島でも行う方針を示した。共に2023年春に新工場を稼働する予定だ。 
インドネシア工場は世界に販売していく拠点となり、米国のコストコなど、大型量販店への販売も検討していくという。
現在、世界で規格外として廃棄されている野菜は全生産量の約30%に上る。これをすべて賞味期限2年のベジートに生まれ変わらせることができたら、腐敗を気にせず常温で野菜を2年間ストックできることになる、と早田さんは言う。
将来的にニューヨークやシンガポールなどで株式を上場したいとの希望もある。「世界的に弊社の存在を認知してもらえたら、ベジートの製造技術を全世界にオープンにするつもりだ」とし、世界のフードバランスを改善する役割も果たしていきたいと早田さんは話している。
記事:澤田祐衣 編集:北松克朗 
トップ写真:5PH / Envato
この記事に関するお問い合わせは、 jstories@pacificbridge.jp にお寄せください。

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