3Dプリンターで介護食作り

高齢者に美味しさと柔らかさを再現

4月 8, 2022
By Emi Takahata
3Dプリンターで介護食作り
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J-STORIES ー これまで造形作業や製造業の現場などで使われてきた3Dプリンターを食品分野に活用し、高齢者が食べても見ても楽しめる介護食を作ろうという研究が進んでいる。
従来のペースト状介護食 (左) と3Dプリンターで作られた形のある介護食。     提供:山形大学のホームページ
従来のペースト状介護食 (左) と3Dプリンターで作られた形のある介護食。     提供:山形大学のホームページ
ペースト状にした肉や魚や野菜をプリンターの「インク」として使えば、様々な形をしたやわらかい介護食が出来上がる。噛みこなしたり、飲み込んだりする力が弱くなった高齢者に食の楽しみを持ち続けてもらえるだけでなく、介護現場の負担を和らげる対策にもなりそうだ。
食品3Dプリンターの開発を進めている山形大学の川上勝准教授は、たんぱく質などの研究に3Dプリンターを使う中で、野菜や肉、魚のゲルを使ったやわらかい食品作りのアイデアが浮かび、地元企業との共同で食品3Dプリンターを開発した。
山形大学 川上勝准教授、食品3Dプリンターは介護食や宇宙食をより良いものにすることができると話す。     提供:山形大学のホームページ
山形大学 川上勝准教授、食品3Dプリンターは介護食や宇宙食をより良いものにすることができると話す。     提供:山形大学のホームページ
現在、介護食として流通している食品の多くは、味や食感に乏しく、食の楽しみを満たすには程遠い。食品3Dプリンターは、好みの硬さなど個人データをあらかじめ入手しておけば最適な介護食が作れるようになる。プリンターに食品ゲルを入れてから出来上がるまでの「調理時間」は約5分程度という。
食品3Dプリンターは介護を受ける高齢者だけでなく、その世話をする介護施設などにとっても利用価値がある。厚生労働省によると、日本では高齢化が進む中で2023年度に約22万人、2040年に約69万人の介護人材の不足が発生する。重度化が異なる嚥下(えんげ)・咀嚼(そしゃく)障害のある高齢者を介護している職員や施設の負担は増え続ける一方だ。
食品3Dプリンターはまだ製品化されておらず、実用として普及させるまでには課題がある。特注すると1台数百万円かかるという高いコストを引き下げるだけでなく、流し込む食材の下準備に時間が掛かるため、それを簡易化する仕組みも開発も必要だ。
川上准教授はJ-Storiesの取材に対し「既に人の手で作られた美味しい食ベ物をわざわざ機械(3Dプリンター)で作る必要は無い」とする一方、「食品3Dプリンターは介護食や宇宙食の代替としてのニーズがある」と話している。
記事:高畑依実 編集:北松克朗 
トップ写真:https://www.yamagata-u.ac.jp/
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