脱炭素へ「エリートツリーを増やせ」

成長早い苗木を量産・販売

4月 6, 2022
By Yui Sawada
脱炭素へ「エリートツリーを増やせ」
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J-STORIES ー 大気中の二酸化炭素(CO2)を吸収する森林の「脱炭素」パワーを強化するため、これまでの品種より約1.5倍のスピードで成長するスギやヒノキの苗木生産が本格化しつつある。
日本にもっとも多く分布している樹木であるスギやヒノキはおよそ40年で成木になるが、これを過ぎるとCO2の吸収力も低下すると考えられている。林野庁によると、日本の人工林の半分以上がすでに樹齢50年を超えており、今のペースで森林が老いていくと脱酸素への効果がさらに低下する事態になりかねない。
この打開策として開発されたのが、成木になるまでの年月が短い「エリートツリー」。国内に9万ヘクタールある社有林でスギやヒノキのエリートツリーを植林している日本製紙は民間企業としては初めて、エリート苗木の量産・販売に乗り出す。
スギの挿し木               https://www.nipponpapergroup.com/csr/npg_esgdb2021_P19-21.pdf
スギの挿し木               https://www.nipponpapergroup.com/csr/npg_esgdb2021_P19-21.pdf
エリートツリーは成長が早い樹木の中から、特に優良な木を人工交配によりかけ合わせ、その中からさらに選別した個体だ。成長が早ければ、同じ期間で吸収される二酸化炭素の量も多くなる。スギのエリートツリーは従来種よりも飛散する花粉の量が少ないという。
同社はすでに熊本県、北海道でエリートツリー等の苗生産を開始しているが、今年1月、静岡、大分、広島、鳥取の4県で苗の育成に必要な事業者としての資格を取得した。まず2024年度に60万本の苗木を量産し、25年春に出荷を始めるとしている。
日本製紙が育成するエリートツリー               https://www.nipponpapergroup.com/
日本製紙が育成するエリートツリー               https://www.nipponpapergroup.com/
海外での植林事業も手掛けており、ブラジルの植林地でユーカリのDNA分析から優良な木を選ぶ手法が実用段階に入っている。ここを舞台に、同社は12年かかる優良品種の選別を5年に短縮する実証試験を進めている。
今後はこうした育種技術を東南アジアなどに広げ、全世界で製紙原料調達の効率化と、CO2吸収量を増やす脱炭素の取り組みを同時に推し進めたいとしている。
記事:澤田祐衣 編集:北松克朗  
トップ写真:blianol/Envato 
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