J-STORIES ー 広島県は、8月5日、核兵器のない平和な世界を実現していくため、核兵器保有国に先制不使用、新たな核兵器の生産と配備を中止することなどを求める「ひろしまウォッチ」を発表した。
被爆地広島からの呼びかけとして、本文書を国連の全加盟国(193か国)に送付し、具体的な行動を行うよう呼びかける。
「ひろしまウォッチ」は、広島県/へいわ創造機構ひろしま(HOPe)が主催する、核問題の解決に向けて国内外の有識者による会議で作成された提言で、2013年から毎年実施されている。
7月16日、17日の2日間に広島市で開催された今年の会議には、藤原 帰一 東京大学名誉教授を議長とし、オーストラリアの元外相ギャレス・エヴァンスさんなど、日本、米国、中国、韓国、ロシア、オーストラリアの21人の有識者が参加した。
外国人記者クラブで開催された記者会見には、広島県の湯崎英彦知事、議長を務めた東京大学の藤原帰一名誉教授、元オーストラリア外相のギャレス・エヴァンス オーストラリア国立大学特別栄誉教授が参加し、これまでの議長声明ではなく、核廃絶に向けて各国政府がとるべき政策を具体的に提言した「ひろしまウォッチ」を初めて発表した。
会見で発表された提言では、冒頭で「核戦争には勝者はなく、決して戦ってはならない」という世界規範を何度も確認し、核兵器のない世界という最終目標にコミットしたにもかかわらず、昨年は危険な後退の年となり、核兵器使用の潜在的脅威は、「かつてないほど憂慮すべきもの」になったと警告。
その上で、核保有国が安全保障政策において核兵器への依存を強めていること、核兵器の数、種類、配備が大幅に増加する危険性が高まっていること、核兵器国による核実験が再開され、軍拡競争が拡がる恐れが出てきたこと、という3つの傾向を重大な懸念として指摘した。
これを受けて、オンラインで会見に参加した広島県湯崎英彦知事は、「核の先制不使用」、「新たな核兵器の生産と配備の中止」、「核実験の阻止」などといった具体的な行動を訴えた。
また、提言について、エヴァンス元豪外相は「最近の憂慮すべき動向に焦点を絞ることで、核兵器をめぐる世界各国の不十分な政策対応を正すことを目的としている」とした上で、軍縮を主張しながら核抑止力に依存している日本の矛盾した政策などにも言及し、「安全保障と核廃絶・軍縮のゴールとのバランスを取ることがいかに難しいかをよく表している」と述べた。
エヴァンス氏は、その上で、「大きな障害はあるが、核軍縮の為に主張し続けることが重要だ。気候変動への理解や、行動が時間をかけて高まってきたように、核軍縮への理解や、コミットメントも時間をかけて成長していく」と継続したアクションの必要性を訴えた。
記事:一色崇典 編集:前田利継(編集長)
トップ写真 提供:J-STORIES 撮影
この記事に関するお問い合わせは、jstories@pacificbridge.jp にお寄せください。