エコフード「昆虫食」を身近に

普及促進へ自販機販売や学校給食も

7月 13, 2022
by yui sawada
エコフード「昆虫食」を身近に
この記事をシェアする
J-STORIES ー 栄養価が高く、飼育の環境負荷も少ない昆虫食を新しいタンパク源として身近に感じてもらおうと、スナックのように自動販売機で販売したり、学校給食に取り入れたりするなど、普及促進に向けた動きが広がってきた。コオロギ、カイコ、タガメなど種類は様々で、企業ビジネスとして養殖や食品化の技術開発も進んでいる。
● 観光施設に昆虫食の自販機
昆虫食で地域活性化を目指すソーシャルスタートアップ「セミたま」(東京都・多摩市)によると、昆虫食の自販機を設置している地域は北海道から鹿児島まで国内に42箇所ある。
 そうした地域のひとつ、長野県では、今年5月と6月に県内の観光拠点とグランピング施設に昆虫食の自販機を設けた。同県では、昆虫を動物性たんぱく質の補給源として食用にする伝統があり、観光客にもそうした文化を楽しんでもらおうという趣旨だ。 
同県下伊那郡にある観光施設「ACHI BASE」では25種類、グランピング施設の「天空南信州グランピング」では18種類の昆虫食を自販機で買うことができる。運営している大澤麻実さん(長野県・飯田氏在住)はメディアのインタビューに対し、「長野県ではもともと昆虫を食べる文化がある。伊那谷ではイナゴや蜂の子、カイコのサナギを食べる習慣があるのに注目されないのはもったいない」と話している。
チョコレートをコーティングしたバッタや、タガメのエキスが入ったサイダーなどユニークな昆虫食に利用客の反応は上々で、設置から約1ヵ月で売り切れが続出している昆虫食もあるという。
ACHIBASEに設置された昆虫食の自販機。チョコレートコーティングしたバッタや、タガメのエキスが入ったサイダー、タランチュラ、コオロギ、ゲンゴロウなどが販売され、500円から2600円で販売されている。     長野県下伊那郡の阿智昼神観光局 提供
ACHIBASEに設置された昆虫食の自販機。チョコレートコーティングしたバッタや、タガメのエキスが入ったサイダー、タランチュラ、コオロギ、ゲンゴロウなどが販売され、500円から2600円で販売されている。     長野県下伊那郡の阿智昼神観光局 提供
● 昆虫食をガチャで提供
今年5月、ジビエ肉や昆虫料理を扱うレストラン「米とサーカス 渋谷パルコ店」(東京都・渋谷区)では、食用の昆虫が入っているカプセルトイ、「食べる昆虫ガチャ」を提供している。
同飲食店は、2016年から昆虫食に注目し、食べ比べセットなどのメニューのほか、オリジナルの昆虫食ブランド「MOGBUG」などを販売中。昆虫食を「より幅広い層に楽しんでもらいたい」と、カプセルトイを設置した。
ガチャは1回500円。フタホシコオロギやセミの幼虫、女王ツムギアリ、ワタリバッタ、スーパーワーム、サソリなど加工した食用昆虫12種類がある。そのいずれかが「お試し」としてミニサイズでカプセルに入っている。
500円で手軽に昆虫食が食べられるカプセルトイ。「当たり」が出た場合、タガメエキスを使ったドリンク「タガメサイダー」を同店で進呈する。     米とサーカス 提供
500円で手軽に昆虫食が食べられるカプセルトイ。「当たり」が出た場合、タガメエキスを使ったドリンク「タガメサイダー」を同店で進呈する。     米とサーカス 提供
● 学校給食で昆虫食の肉まん
徳島県立徳島県立小松島西高校では今年6月、食用コオロギのパウダーをつかった肉まんが学校給食に登場した。
持続可能なたんぱく質源として注目されている食用コオロギを学校給食に導入できないかという生徒と先生の発案から生まれたメニューだ。パウダーは、徳島大学の基礎研究をベースに食用コオロギの利用技術を開発しているベンチャー企業、グラリス(徳島県・鳴門市)が無償で提供した。
同社で広報を担当する川原琢聖さんは、J-Storiesのインタビューで、今回の無償提供がきっかけになって、将来、社会の主役になる今の子供たちが人口増加、環境問題などの社会課題を共に考えるようになって欲しい、と期待を示した。
川原さんは、昆虫食にはまだ多くの人に抵抗感や心理的なハードルがあるとしたうえで、「子供が先に始めて親が後から知っていくこともある。そういう形で(昆虫食への関心が)広がっていくのも面白い」と話している。
グラリスが小松島西高校に提供した国産フタホシコオロギの粉末。煮干しや干しエビのような風味とうま味があるという。オンラインショップで購入可能。     グラリス 提供
グラリスが小松島西高校に提供した国産フタホシコオロギの粉末。煮干しや干しエビのような風味とうま味があるという。オンラインショップで購入可能。     グラリス 提供
 昆虫食を推進しているセミたまによると、日本では60年代まで55種類もの昆虫が食用になっていた。しかし、経済成長とともに、昆虫食の需要は減り、85年には一部の地域で食材として残っている6種類まで激減したという。
多くの日本人にはまだなじみの薄い昆虫食だが、牛や豚などに比べ、昆虫の飼育は飼料の消費や二酸化炭素の(CO2)の排出量が少なく、国連食糧農業機関(FAO)は昆虫食の利用拡大が世界の食糧問題の解決につながるとの見解を示している。
記事:澤田祐衣 編集:北松克朗 
トップ写真:jirkaejc / Envato
この記事に関するお問い合わせは、 jstories@pacificbridge.jp にお寄せください。

***

***

上記の記事の内容は、動画リポート(英語)でもお伝えしています。

***

本記事の英語版は、こちらからご覧になれます。
コメント
この記事にコメントはありません。
投稿する

この記事をシェアする
提携プレスリリース
プレスリリース配信・世界最大手広報通信社
ニュースレター
ニュースレター購読にご登録いただいた皆様には、J-Storiesからの最新記事や動画の情報を毎週無料でお届けしています。