ブルーカーボン生態系の立役者は様々だ。沿岸の水深2m付近に生えるアマモなどの海草、熱帯のマングローブなどのほか、深いところで生育する大型海藻類のワカメ、アラメ、カジメなどもある。成長の早い大型海藻類は、とくにブルーカーボン増加に貢献する。海岸部の湿地や干潟なども炭素の貯留に重要な役割を持つ。
ところが、近年、地球温暖化による海水温の上昇などによって、海草、海藻が生育する藻場(もば)の衰退が目立ってきた。失われかねないブルーカーボンの力をどう再生するか。国際的な危機感が高まる中、日本では政府や企業の横断的な取り組みが広がっている。
失われた藻場を再生するために、事前に採取した母藻から、海藻の種にあたる配偶体を培養する方法として、フラスコ内で浮遊状態にして増殖させる「フリー配偶体技術」を応用。配偶体からアラメ苗を大量につくる技術を確立させた。苗を移植する、胞子を散布するという手法と異なり、完全に消失した場を再生することができる。
同研究所ではこの方法によってアラメ場の再生に成功。数ヶ月後には、メバルの稚魚やイカの卵が産みつけられていることを確認したという。
「地域によって藻類の特徴は異なるが、それぞれの特徴を把握すれば対応することができる。大型藻類は世界中に分布しており、私個人としてはこの技術が世界で応用できればと考えている」と同研究所の上席研究員リン ブーン ケンさんはJ-Storiesの取材に対して語っている。
全国で活動が行われる中、ブルーカーボン事業を通じて社会貢献を目指す動きもある。ジャパンブルーカーボンプロジェクト(東京都板橋区)は、22年から釧路西港沖で雑海藻駆除などの実証実験を進めている。今年5月には、釧路ガスと共同で昆布の藻場をつくる「釧路ガス昆布の森づくり」事業を構想、実証実験を進めていると発表した。昆布は魚類の産卵場所でもあり、漁業の発展にもつながると期待されている。
こうしたブルーカーボン活動の高まりから急速に注目を集めているのがJブルークレジットだ。森林保全に関わるJ-クレジット制度が国で運営されているのとは異なり、民間団体が発行するボランタリークレジットだが、創出業者、購入者ともに急速に増加している。
前出の鹿島技術研究所葉山水域環境実験場もメンバーとして活動する葉山アマモ協議会もJブルークレジットを認証を取得。ブルーカーボン活動が「5年、10年後にはさらに大きな動きになるのではないかと個人的に感じている。それまでにさらに私たちの技術を向上させたい」とリン ブーン ケンさんは話している。
記事:嵯峨崎文香 編集:北松克朗
トップ写真:鹿島 提供
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