J-STORIES - 日本の宇宙スタートアップ企業 ispace(アイスペース)は、日本時間4月26日(水曜日)未明に予定していた民間企業としては世界で初めてとなる月面着陸にチャレンジしたものの、「直前で通信が途絶えた為、着陸を確認できない。最終的に月面へハードランディングした可能性が高い」と発表した。
同社の袴田武史・最高経営責任者(CEO)は着陸予定時間に行われたライブストリーム会見において、「着陸のところまで通信は確立できていた」ものの、「現在は通信が確立できていない状況」だと語った。
同社はその後、声明を発表し、「ランダーの姿勢が月面に対して垂直状態になったことを確認したものの、推進燃料の残量が無くなり、急速な降下速度の上昇がデータ上確認された。これらの状況から、当社のランダーは最終的に月面へハードランディングした可能性が高いと考えている」と状況を説明している。
同社の月面着陸船は、昨年12月にイーロン・マスク氏が代表を務める航空宇宙メーカーSpaceX社のFalcon 9 ロケットで打ち上げられ、3月21日には月周回軌道に入っていた。
月面への降下は26日0時40分ころから開始し、その約1時間後の1時40分頃、月の北半球にある「Mare Frigoris」(氷の海)に着陸する予定だった。
月面着陸は、過去、米国、旧ソ連、中国が国家プロジェクトとして行なっているが、民間企業としてはこれまでに前例がない。民間企業による低コストの月面着陸を実現させることで、民間主導による宇宙開発の推進に弾みがつくことが期待されていた。
ispace社は、2010年設立。「Expand our planet. Expand our future. (人類の生活圏を宇宙に広げ、持続性のある世界を目指す)」をビジョンに掲げ、月面資源開発に取り組んでいる宇宙スタートアップ企業。月への高頻度かつ低コストの輸送サービスを提供することを目的とした小型の着陸船と、月面探査車を開発。民間企業が月でビジネスを行うためのゲートウェイとなることを目指し、「月」市場への参入をサポートするための月面データ提供サービスなども立ち上げている。
ispace社は、2040年に月に1,000人が定住し、10,000人が往来する社会の実現を目指している。同社は、宇宙で開発されたインフラが地球で住む人々の生活を支えることで宇宙全体がエコシステムとなる持続的な世界の実現を目指すとしている。
袴田CEOは今後について、成功は確認できなかったものの着陸直前までのフライトデータは得られていたとして「ミッション1は非常に大きな成果を残した。これを元に、このナレッジをフィードバックして、次の技術の成熟度を上げていく。我々は歩み続ける」と語った。
同社は今回の着陸船の設計及び技術の検証を行い、2024年にミッション2、2025年にはミッション3の打ち上げを行う予定としている。