J-STORIES ― 生成AI(人工知能)のChatGPTが「コンシェルジュ」を務め、ホテル利用者のさまざまな質問に対応する試みが6月21日、国内で始まった。
ルームサービスのメニューや、客室内の窓の位置などウェブサイトに載っていないようなホテルやその周辺に関する詳しい情報について、24時間365日利用可能なAIコンシェルジュが即座に具体的な情報を提供する。熟練のコンシェルジュのように、人間らしい気遣いや、機転の効いたコミュニケーションできるというサービスだ。
「Kotozna ConcierGPT(コトツナ コンシェルGPT)」と名付けられたこのサービスは、事業者向けの多言語チャットツールなどを提供してきたKotoznaが開発した。
「ホテル業界はコロナパンデミックで大幅な人員削減をしましたが、この1年で宿泊客は、インバウンド客を含めて、大幅に戻ってきています。それなのにサービス側の人材が圧倒的に不足して、フル稼働ができていない状態です。加えてインバウンドのための多言語が話せる人材が枯渇していて、それに代用するものとして多言語対応可能なチャットGPTが登場しました。人件費はチャットGPTの方が圧倒的に安く抑えられます」(Kotozna代表取締役 後藤玄利氏)
新型コロナウィルス感染症が世界的に拡大する中で、宿泊施設をはじめとした接客・サービス業では、店員と顧客との接触をできるだけ少なくする非対面型の接客・省人化が進んだ。
また行動制限がなくなった現在においても、人手不足などによる従業員の賃金上昇や、物価高でコストを抑えたい企業側の都合もあり、非接触での非対面型接客サービスへの需要は引き続き高い。
同社は、これまでにも宿泊施設向け多言語コミュニケーションツールなどを通じて宿泊施設やサービス提供者への多言語化・DX化の実績があるが、コンシェルジュだけは高いニーズがありながらも、そのサービスに求められる高い基準のために開発が難航していたという。
「コンシェルジュサービスを低コストかつ高品質でやりたいという要望は以前から聞いていました。ただ従来型のAIチャットボットでやると品質がゲストの期待値に全く達しなかったので当初は諦めていました。そんな中チャットGPTが登場し、ゲストの期待を上回るサービスが提供できるようになったので、ようやくこのサービスを始めることができました」(Kotozna代表取締役 後藤玄利氏)
従来、無人のチャットボットから正確な回答を引き出すには、回答の範囲を指定したり、情報を補足するなど、質問者が具体的な質問をする必要があったが、Kotozna ConcierGPTでは、「どんなお部屋がありますか?」「夏休み3日間のおすすめの過ごし方を教えてください」といった質問に対してもコンテクストを理解し、顧客の潜在的な要望を汲み取った適切な返答が可能だという。
現在の機能はホテルや旅館の予約サポートに限定されているが、同社は今後は、ホテル内での幅広い業務を対象とし、他の業界における各種ビジネスに対しても高品質な多言語カスタマーサービスを提供する新しいプラットフォームへと成長させる計画だとしている。
「今回ホテル向けのコンシェルジュですが、今後は、観光案内所など広くツーリズムのサービスに広げていきたい。また、(長期的には)カスタマーサービス全体に使用可能だと思うので、コールセンター、カスタマーセンター、コンタクトセンターといった所でも利用していけるようにしていきたいです」(Kotozna代表取締役 後藤玄利氏)
このAIコンシェルジュは、本格的なサービス提供を前に、沖縄県糸満市のサザンビーチホテル&リゾート沖縄で今年5月から試験導入されている。後藤氏によればこれまでのところ「これまでのチャットボットとは全く違って、自然な回答で驚いた」などと好評の声を受けているという。
このAIコンシェルジュは、本格的なサービス提供を前に、沖縄県糸満市のサザンビーチホテル&リゾート沖縄で今年5月から試験導入されている。後藤氏によればこれまでのところ「これまでのチャットボットとは全く違って、自然な回答で驚いた」などと好評の声を受けているという。
記事:肱黒勇正 編集:一色崇典
トップ映像:Kotozna 提供 トップ画像:KotoznaHP、サザンビーチホテル&リゾート沖縄より
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