J-STORIES ー 使用済み食料油や微細藻類のミドリムシ(学術名:ユーグレナ)を主成分とするバイオディーゼル燃料を軽油の代わりに鉄道に使う試験が国内で初めて行われた。化石燃料の使用を減らし、列車運行に伴う地球環境への負荷を低減しようという試みだ。導入する燃料は分子構造が軽油と同じで、エンジンなどに大きな変更をしなくても使うことができるという。
バイオディーゼル燃料は軽油と同様、燃焼時にCO₂(二酸化炭素)を排出するが、バイオマス(生物資源)原料が光合成によって大気中のCO₂を吸収しているため、CO₂の排出は実質ゼロと考えられている。使用済みの食用油を使うため、資源保全やCO₂抑制の効果が高まることも期待できる。
走行実験に使うバイオ燃料の原料である「ユーグレナ油脂」は、東京都港区のバイオベンチャー、ユーグレナ(東京都港区)が開発、製造している。同社は東海旅客鉄道(JR東海、愛知県名古屋市)と協力、今年1月下旬から同燃料を使い、JR東海の在来線で車両の走行実験を始めた。昨年6月にはバイオ燃料を使用し、政府機関の航空機の飛行にも成功した。
ユーグレナは2025年までにバイオ燃料の商業生産体制を構築する計画。同時に、社会貢献にも積極的で、日本企業としては初めて、国連世界食糧計画(World Food Programme)と事業連携し、ソーシャルビジネスによる「サステナブルな支援体制の実現」を推進している。
会社設立は、創業者の出雲充社長が学生時代、貧困が広がるバングラデシュを訪れ、「(子供たちが)健康に生活できるような栄養源を見つけたい」と思ったことがきっかけだった。現在、同社は売り上げの一部を協賛金として、栄養価が注目されるユーグレナ入りクッキーをバングラデシュの子供たちに無償で配布する取り組みなども行っている。
記事:澤田祐衣 編集:北松克朗
トップ写真:Euglena YouTube Channel
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