イヤホンで脳波を計測、状態改善も

ストレスを緩和し「最高の集中力」を実現

12月 7, 2022
by Ayaka sagasaki
イヤホンで脳波を計測、状態改善も
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J-STORIES ー 人間の脳とコンピューターを直接つなぎ、念じただけで機械やシステムを自由に操作できる近未来社会。その実現に向けたブレイン・マシン・インターフェイス(BMI)の新分野として、イヤホン型の脳波計で自律神経の状態をモニタリングし、生活の改善に役立てようという動きが日本国内でも進んでいる。
外見は普通のワイヤレスイヤホンと変わらないが、脳波を解析し、ストレスを和らげ、集中力を高める効果がある「VIE ZONE(ヴィーゾーン)」。脳波の変化をアプリを通じて携帯端末に映し「ニューロフィードバック」という仕組みによって、疲れを検出すると休憩が必要な時間を示したり、音楽による瞑想でリフレッシュができるようにする。
開発したのは神奈川県鎌倉市に本社を持つVIE STYLE。レコード会社勤務の傍らミュージシャンとしても活動した経験のある今村泰彦CEOが「味わい深い人生を ~Feel the life~」をミッションに掲げ2013年に同社を創業した。VIE ZONEの開発についてはアメリカのクラウドファンディング「キックスターター」で資金を調達、リリースした。
脳波をはじめとする生体情報を高精度に取得できるVIE ZONE。独自開発のAIで解析し、集中、リラックスの度合いをアプリで可視化する。&nbsp; &nbsp; &nbsp; VIE STYLE 提供<br>
脳波をはじめとする生体情報を高精度に取得できるVIE ZONE。独自開発のAIで解析し、集中、リラックスの度合いをアプリで可視化する。      VIE STYLE 提供
同社ではVIE ZONEの効果を実証するために東京大学大学院工学研究科との共同研究も続けている。今年11月には北米神経科学学会で、高い集中を示す「ゾーン」状態にある脳波を計測、ニューロフィードバックによりユーザーをゾーン状態に導ける可能性があるとする研究成果を発表した。
昨年から国立がん研究センター東病院と共同で、内視鏡処置時の麻酔のかかり具合に関する実験も開始。イヤホン型脳波計で患者の鎮静状態を手軽に、かつ高精度にモニタリングできる成果を今年11月に学会発表した。同社は将来的に、聴覚を刺激して麻酔効果を補助する技術開発を手掛けたいという。
今年度中には「VIE ZONE」を防水仕様にし、サウナを使ったときなどのように心身バランスが「ととのう」状態を目指すイヤホン「VIE CHILL(ヴィーチル)」を国内向けに販売する予定。海外展開にも意欲的で、11月にはスペイン・バルセロナでの展示会でもVIE ZONEを出品した。
「ニューロテックとエンターテインメントを掛け合わせて感性をアップデートさせる仕組みが当社の強み。今後、脳神経に関わる医療分野や手軽に未病対策ができるヘルスケアサービスを中心に人々のウェルビーイングに貢献したい」と同社取締役COOの楠富智太さんはJ-Storiesの取材に対して語っている。
完全防水型のVIE CHILLは、仕事の合間などの5分間で効率よく「ととのう」感覚を味わえるという。&nbsp; &nbsp; &nbsp; VIE STYLE 提供<br>
完全防水型のVIE CHILLは、仕事の合間などの5分間で効率よく「ととのう」感覚を味わえるという。      VIE STYLE 提供
イヤホン型の脳波計については、すでに凸版印刷が独自製品の全国販売を展開している。同社が昨年発売した「b-tone(ビートーン)」は片耳にかけて装着し、脳波の計測データをアプリで確認できるイヤホン型脳波デバイス。集中力が高まる条件を分析することで、オフィスでの働き方改革やオンライン学習塾でのコンテンツ改良などに活用することができる。
さらに、旧富士ゼロックス発のスタートアップ企業サイバネックス(東京都大田区)は11月、独自のデバイスを使ったリラクゼーションサロン「エクゾロス麻布広尾」をグランドオープンした。両耳タイプのイヤホン型脳波計でリラックス度合いをスコアとして可視化し、さらに深いリラクゼーションを体験するための施術を提供している。
脳科学とAI技術を融合させたブレインテック市場は、三菱総合研究所の試算によれば2024年に5兆円規模になると予測される。大胆な発想によるイノベーションを推進するムーンショット型研究開発事業のプロジェクトのひとつとして内閣府主導によるBMIの研究、開発も進んでいる。
記事:嵯峨崎文香 編集:北松克朗
トップ写真: Prostock-studio/Envato
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