「困り者」の水草からバイオ燃料やクラフトジン

日本企業がカンボジアで新たな再資源化を推進

11月 16, 2022
By Emi Takahata
「困り者」の水草からバイオ燃料やクラフトジン
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J-STORIES ― カンボジア最大のトンレサップ湖で大量に増殖し、人々の暮らしに悪影響を及ぼしている害草ホテイアオイ。その「厄介者」を回収し、新たな生活の糧に変身させようというリサイクルビジネスが、日本の老舗企業の手で広がりつつある。
この企業は古紙などの回収・再生事業を半世紀以上手掛けてきたサンウエスパ(岐阜県岐阜市)。代表取締役の原有匡さんは2015年に31歳で経営を任されて以降、「不要なものに価値を見出す」リサイクル事業の将来を人口減の日本ではなく成長する海外に求めようとの思いから、同社の国際展開に力を入れてきた。
岐阜本社にて事業構想を説明している代表取締役の原有匡さん。同社が目指す方針にグローバル化とエネルギーのリサイクル化があると話す。     サンウエスパ 提供
岐阜本社にて事業構想を説明している代表取締役の原有匡さん。同社が目指す方針にグローバル化とエネルギーのリサイクル化があると話す。     サンウエスパ 提供
自社の技術を生かす海外の舞台として着目したのが、世界3大害草のひとつ、ホテイアオイの大量繁殖に悩まされているカンボジアだった。ホテイアオイは1年もかからずに数百万倍に増殖する。水上交通や漁業を妨げる害草を生活に役立つ新たな資源としてリサイクルすれば、暮らしの改善だけでなく、回収作業を通じて地元に新たな雇用をもたらすこともできる。
首都プノンペンから車で3時間北上したところに位置するトンレサップ湖とホテイアオイ。     サンウエスパ 提供
首都プノンペンから車で3時間北上したところに位置するトンレサップ湖とホテイアオイ。 サンウエスパ 提供
同社は5年前から同湖のホテイアオイを回収し、それを原料にしてバイオ燃料であるエタノールの生産を続けてきた。今年5月には、地元コンポンチュナン州との協力による量産プラントが稼働した。 
プラントで製造したエタノールは、水上生活者の必需品である発電機の燃料にするほか、消毒液にも転用されている。また、エタノール生成後の残渣を使ってメタンガスを産出、プラント内の生活施設でエネルギーとして使われている。
コンポンチュナン州にあるバイオエタノール製造工場。プラントの生産能力は1日55リットルで燃料や消毒液も生産している。     サンウエスパ 提供
コンポンチュナン州にあるバイオエタノール製造工場。プラントの生産能力は1日55リットルで燃料や消毒液も生産している。 サンウエスパ 提供
ただ、ホテイアオイ由来のバイオエタノールは燃料としての収益性が十分ではなく、今後の市場拡大は期待しにくい。同社ではより付加価値の高いビジネスを実現すべく、エタノールを活用した高級クラフトジンの生産にも乗り出している。
同社によると、エタノールの付加価値は飲料用にすることで燃料用の100倍以上にもなる。すでに、サトウキビ由来のバイオエタノールを原料にした高級クラフトジン「MAWSIM(マウシム)」を商品化し、今夏からカンボジアのホテルに提供、日本などでも通販サイトで販売中だ。新商品となるトンレサップ湖のホテイアオイを使ったクラフトジンは、今年度中の発売を目標に準備が進んでいる。
今夏からカンボジアの飲食店やホテルで提供開始。日本では2022年9月よりオンラインショップで発売開始。 サンウエスパ 提供
今夏からカンボジアの飲食店やホテルで提供開始。日本では2022年9月よりオンラインショップで発売開始。 サンウエスパ 提供
ホテイアオイの被害はカンボジアだけでなく、アジアの他の地域でも深刻だ。J-Storiesの取材の中で、原さんは今後も自社の技術を活用したエネルギーリサイクルの拡大に意欲を示し、ラオスやスリランカなど他国でも展開して行きたいと話している。
記事:高畑依実 編集:北松克朗
トップ写真:poetique_id/Envato
この記事に関するお問い合わせは、jstories@pacificbridge.jp にお寄せください。

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