J-STORIES - アジア圏を中心とする世界のスタートアップが今週、シンガポールに一同に集まった。10月28日から30日まで行われた、東南アジア最大級のスタートアップイベント「SWITCH」に参加し、海外展開などグローバルな舞台で成長する機会を獲得するためだ。
SWITCHとは、”Singapore Week of Innovation & Technology” の頭文字をとったもので、今年で9回目となる。主催者側によると、3日間に渡るイベントでの参加者は約2万5,000人。参加者の多くは、東南アジアや日本、台湾、韓国などアジア圏の国々からだったが、ドイツ、スペイン、ノルウェー、エストニア、インド、ブラジル、カタール、などからもスタートアップ支援機関が参加。展示ブースやイベントなどは国際色に溢れていた。
シンガポールが、すでにアジアの老舗ともいえるスタートアップイベントを政府主導で毎年開催していることには理由がある。
人口わずか600万人ながらアジアの金融都市として確固たる地位を築いたシンガポールは近年、新しい国家戦略として「金融ハブ」から「ディープテックハブ」への変貌を遂げようとしている。
今月、シンガポール政府は国内のディープテックスタートアップに対して、ベンチャーキャピタルを通じて新たに4.4億ドル(約660億円)の追加投資をすると発表。
世界市場で通用する自国企業を育成すること目標に2017年からシンガポール政府の主導で官民一体となって行われてきた、ディープテック企業への投資額は、総額10億ドル(約1,500億円)に上ることになる。
SWITCHには起業家だけではなく、各国のいわゆる「スタートアップ・エコシステム」に携わるあらゆる関係者や支援者が参加した。
スタートアップの上場を支援する、アジアの金融関係者や主要証券取引所も積極的に自国での上場メリットをアピール。アジア最大の取引所でシンガポールにも事務所を構える東京証券取引所は、今年「アジア スタートアップ ハブ」という枠組みを創設。現在、台湾やシンガポール、韓国、ベトナムなどの海外有望スタートアップ14社に対して東京市場で上場するための支援を行なっている。
一方で、台湾の証券取引所などは、東証とは違うメリットについてサイドイベントなどを通じて強調。上場に至るまでのコストや時間が少なくてすむことや、上場後にさらなる資金調達がしやすいことなどを、IPOを目指す各国の起業家にアピールした。
メイン会場で存在感を示していたのは、日本の主要各都市のブース。JETROの支援もあり、日本全国から地方公共団体や大学の関係者が参加した。
SWITCHでブースのベストデザイン賞を受賞したのは福岡市。東京都の「SusHi Tech」に続き、今年「Ramen Tech」を開催して盛り上がりを見せた福岡市の勢いは止まらない。浴衣を着た福岡市の女性職員が、「屋台」をモチーフにしたブースで、訪問者をもてなした。
シンガポールという日本から飛行機で7時間も離れた場所で、日本の各都市同士のスタートアップ推進担当者たちは交流を深め、スタートアップ育成や支援のノウハウを共有した。
「札幌でのスタートアップエコシステムの構築はまだまだこれからですが、産学連携を通じて取り組んでいるところです」と語ったのは、北海道大学のスタートアップ創出マネージャーを務める野中麻紀さん。SWITCH には今年初めて参加し、福岡市の取り組みなどから学べたことが多かったという。
また世界5,500社のスタートアップの中から、SWITCH 2024においてトップ10に選出された企業のうちの2社は東京を拠点とする日本企業だった。
一社は、製造業などでの外観検査をノーコードで自動化するAI技術を提供する株式会社MENOU。もう一社は、超音波を使ったがんの治療法を提供するソニア・セラピューティクス株式会社がTOP10入りを果たした。
記事:前田利継
トップ写真 提供:J-STORIES (前田利継)
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