J-STORIES ー 海に囲まれた日本にとって有望な再生可能エネルギー源となる洋上風力発電の普及が期待される中、台風のような強風下で羽根が傾いても安定して発電できる風車の開発が進んでいる。 洋上発電が広がるカギとなる発電コストについても大きな低減が可能になるという。
海洋再生エネルギーのベンチャー企業、アルバトロス・テクノロジー(本社:東京都中央区)が取り組んでいるのは、海に浮かべる「浮遊軸型(Floating Axis Wind Turbine: FAWT)」と呼ばれる浮体式風車の実用化だ。浮体式風車は、海底にある基礎に土台を固定する着床式の風車に比べ、環境負荷が少ないなどの利点がある。
同社の浮遊軸型風車は、円筒形の軸に縦長の羽根が3枚付いており、強い風を受けると軸が斜めに傾きながら回転して発電する。一般的な浮体式風車が軸を垂直に維持しなければならないのに対し、 浮遊軸型は台風時のような強風にも対応しやすく、風圧で軸が傾斜しても発電性能が低下しないという。
陸上で行う風力発電に比べ、洋上発電は建設費がかさみ、送電や維持管理費用も含めた発電コストが高くなる。風力発電の推進に向け、大手、ベンチャー各社が洋上発電の技術を競っているが、普及の決め手となるのは、割高な発電コストをいかに低減するか、という点だ。
アルバトロスによると、同社の 浮遊軸型風車は、クレーンを使わずに組み立てと海上設置が可能で、従来の浮体式風車の約半分のコストで設置ができる。また、カーボン複合材を使っている風車部分は、大規模な工場を必要としない成形方法を採用、従来の風車よりも低コストで国内製造が可能という。
発電機についても、海外で製造されている大型機ではなく、日本国内で調達できる小型発電機を複数搭載することで、「すべてを国産で賄えるようにした」と同社では説明している。
同社は2022年9月、ジェネシア・ベンチャーズ(東京都港区)から総額1億円の資金を調達した。浮遊軸型風車の小型実験機は2024年度に海上実験を開始する予定で、以降、2年ごとに大型機海上実験、実用化を目指している。
浮遊軸型風車については、海外ではスウェーデンの企業(sea twirl)などが同様の開発を着々と進めている。アルバトロスの秋元博路代表取締役は「今回の開発で重要なのは、日本でしか作れないものを作るのではなく、日本でも作れる技術を獲得すること」と指摘。 日本政府から助成金を獲得して開発を加速、欧米勢と競合していきたいとしている。
記事:大平誉子 編集:北松克朗
トップ写真:アルバトロス・テクノロジー 提供
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強風時でも姿勢制御出来る方法がきになります。また、ブレード製作のためのコストが低下できる要因をしりたいです。