[Tokyo Updates] 水道水源林を守る「CASIOの森」

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7時間前
by Tokyo Updates
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東京都民の命の源である水道水源林。東京都水道局はその一部の森林にネーミングライツを設定し、企業と協働して森づくりを行う取組を進めている。 その一つである「CASIOの森」ではどんな活動が行われ、どのような効果が表れているのか。カシオ計算機株式会社(以下カシオ)のコーポレートコミュニケーション本部サステナビリティ推進室の山岸正克(まさかつ)氏に聞いた。
2024年5月25日にCASIOの森で行われた活動の様子.          TOKYO UPDATES 提供 (以下同様)
2024年5月25日にCASIOの森で行われた活動の様子.          TOKYO UPDATES 提供 (以下同様)

計画的な森林保全のために

 都の水道水源林は奥多摩町、山梨県の小菅村、丹波山村および甲州市にまたがっており、その範囲は東西約30.9キロ、南北約19.5キロ、面積は約25,000ヘクタールに及んでいる(2024年4月現在)。これは多摩川上流域に広がる森林面積の約5割、東京ドームでいうと5,400個以上にあたり、国内の水道事業体管理の森林としては最大規模だ。
 この水道水源林の保全にネーミングライツを取り入れた狙いを、東京都水道局の担当者はこう語る。
 「水道局は120年以上にわたって管理していますが、適切に管理していくためには計画的な森林保全作業を進めるとともに、水源地保全の重要性の理解促進や水源の森づくりへの参加者拡大を図るべく多様な主体と連携する必要があると考えたのです」
 カシオが東京都水道局とネーミングライツ協定を結んだのは2018年。甲州市内の2.46ヘクタールを「CASIOの森」と命名した。
 カシオの山岸氏は「環境問題への取組を検討している際、CO2削減をグループ全体の事業でも取り入れようと模索する中で、水源林の保全こそとても重要だろうと締結を決めました。実は、当社の創業者が林業の盛んな高知県出身という縁もありました」と述べる。
 活動内容は、適切な森林環境を維持するための地ごしらえから植栽、下刈り、間伐、さらにはミズナラの補植のためのどんぐり採取や育苗など。さらに、森林で発生する病虫害を防ぐ野鳥の繁殖を促すための巣箱づくりや設置、定期的な清掃など多岐にわたる。
活動の狙いや意義を語る山岸氏
活動の狙いや意義を語る山岸氏

高まったテレカップリングの意識

 活動を始めるにあたり、保全活動の参加者は全社員に向けて募った。ただし、業務ではなくあくまでもボランティアとして、交通費も含めてすべて手弁当で賄うことを条件とした。
 「やはり自分の意思で現場に行ってどういったニーズがあるか知ってもらい、保全する必要性を肌で感じてほしかった。あくまでも自分ごととして考えてもらうには、業務命令ではなく自主的な取組が必要だろうという狙いでした」
 協定の取り決めで、現地での活動は春、夏、冬前の年3回となっていた。最初は十数人ほどしか集まらなかったものの、回を重ねるごとに徐々に増え、今年は20人以上になったという。
 「リピーターもいますが、社内向けに活動報告を公開するうちに興味を持つ社員が増えました。しかも、子どもさんも含めて家族で行きたいとか、OBや社外の有識者等にも伝わって少しずつ輪が広がった感じです」
専門家の指導を受けながら樹木の間伐を行う参加者
専門家の指導を受けながら樹木の間伐を行う参加者
 参加者からは、「現地に来たことで楽しさや水道水源林の保全の意義が理解できた」「環境保全の現場を体験することでSDGs等の社会課題を自分ごととして捉えるようになった」「この活動を通じてさまざまな社会課題、新規事業のアイデアが発見できると実感した」などの感想が寄せられているそうだ。
 「当然、水源林までは都内からだとかなり遠く時間もかかる。都内で生活し仕事をする我々にとって水源林の環境に無関心でいるべきではない。そういうテレカップリング(距離を超えた社会経済的および環境的な相互作用)の意識が高まってきたことも、当社にとって重要な効果だと思っています」
下刈りも重要な作業となる。
下刈りも重要な作業となる。

共有される空気感

 カシオはまた、全国7か所の事業所内でも積極的に自然保全活動に取り組んできた。現在も取組を続けている2か所のうちの一つ、東京都羽村市にある羽村技術センターには1,000人以上の社員が勤務するが、そこではどんな活動が行われているのか。
 「CASIOの森の活動とほぼ同時期に始めました。例えば、敷地内にどんな植物や生物が存在しているのか生物多様性の調査を実施しました。社員の中には、毎朝出社すると同時に敷地内の植物を観察する者もいるくらい。実はそんな中、絶滅が危惧される希少な植物も発見されました。専門家の方に聞き、文献を調べ、害虫などを防ぐネットを張って保護するなど試行錯誤しながらやっています。できるだけこの地に適したさまざまな植物が自生できるような環境をつくりたいですね」
 そうした取組によって、社内にはある種の空気感が少しずつ共有されるようになったという。
 「当社が掲げているマテリアリティ(重要課題)の一つが、自然との共生。CASIOの森や事業所内での活動によって、この意識が浸透しつつあることを実感しています」
そして、意識の高まりが結果として同社の事業活動全体に何らかの刺激を与えるのではないか、と山岸氏は感じはじめている。
 「当社にはG-SHOCKやPRO TREKのようなネイチャー要素を持った時計商品群もあります。将来的には、そういった商品の企画や販売に好影響が出てくるのではということも期待しています」
羽村技術センターの敷地内で行われた希少植物の保護活動の様子
羽村技術センターの敷地内で行われた希少植物の保護活動の様子

山岸正克

1993年入社。入社時は、時計や医療機器関連の企画部門でキャリアをスタート。2007年にサステナビリティ推進室の前身組織へ異動し、環境対策に携わるようになる。2018年より主担当として「CASIOの森」を推進。毎回参加者に新しい気付きや学びの提供を模索している。また、災害支援など社外のボランティア活動にも精力的に参加している。
1993年入社。入社時は、時計や医療機器関連の企画部門でキャリアをスタート。2007年にサステナビリティ推進室の前身組織へ異動し、環境対策に携わるようになる。2018年より主担当として「CASIOの森」を推進。毎回参加者に新しい気付きや学びの提供を模索している。また、災害支援など社外のボランティア活動にも精力的に参加している。
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東京都は、100年先を見据えた"みどりと生きるまちづくり"をコンセプトに、東京の緑を「まもる」「育てる」「活かす」取組を進めています。企業など様々な主体との協働により、「自然と調和した持続可能な都市」への進化を目指しています。 https://www.seisakukikaku.metro.tokyo.lg.jp/basic-plan/tokyo-greenbiz-advisoryboard
取材・文/吉田修平
写真提供/カシオ計算機株式会社

CASIOの森

CASIO公式ウェブサイト

「このコンテンツは、TOKYO UPDATESとのパートナーシップにより提供されています。」

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