日豪つなぎ液化水素を海上運送

日豪つなぎ液化水素を海上運送

「脱炭素」推進へ新たな供給チェーン構築

by yui sawada
 J-STORIES ー 脱炭素社会を実現する大きな決め手の一つ、水素エネルギーの供給拡大に向け、世界で初めて液化水素運搬船を使った海上運送実験が日本とオーストラリア間で成功した。豪州が豊富な埋蔵量を持つ低品質石炭「褐炭」で水素を製造し、日本に運んで活用する新たなサプライチェーンが実現に近づいている。
液化水素運搬の実証実験に成功したのは、川崎重工業や岩谷産業など7社で構成する技術研究組合「HySTRA(ハイストラ)」(東京都港区)。昨年12月、川重が建造した液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」が神戸にあるHySRTA専用港から豪ビクトリア州へ出航。現地で褐炭から製造、液化した水素を積み込み、今年2月下旬に神戸に戻った。
約9,000kmにも及ぶ航海を終えオーストラリアから神戸に到着した液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」      HySTRA 提供
約9,000kmにも及ぶ航海を終えオーストラリアから神戸に到着した液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」      HySTRA 提供
水素は燃焼しても二酸化炭素(CO2)は排出せず、燃料電池として使用する際には水蒸気しか出さないクリーンエネルギーで、日本など各国が利用技術の開発やインフラ整備を進めている。普及拡大に向けた重要な施策のひとつは、水素の密度を高め、貯蔵し、大量の輸送を可能にするシステムの実現だ。
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による「褐炭水素プロジェクト」の資金援助を受けた今回の実証実験では、豪州の設備で水素を製造、液化工程を経て、体積を気体の1/800に圧縮。赤道直下の高温の状況でも零下253°の極低温を保持し、運搬できる貯蔵設備を新たに開発した。
豪州には日本の総発電量の240年分に相当する褐炭の埋蔵量があるといわれ、水素を現地生産し海上輸送が可能になれば、日本にとって水素供給の重要なルートになる見通しだ。
HySTRAは、褐炭を使って水素を製造する際に発生するCO2の分離技術など、事業化に向けたさらに研究開発を進め、2030年頃にCO2フリーの水素サプライチェーンを構築、商用化することを目指している。
日本の水素供給への貢献が期待される豪州からの液化水素運送ルート     HySTRA 提供
日本の水素供給への貢献が期待される豪州からの液化水素運送ルート     HySTRA 提供
豪州ラトロブバレー、ロイヤン発電所炭田。その広さは、発電設備含め約6,000haに及ぶ     HySTRA 提供
豪州ラトロブバレー、ロイヤン発電所炭田。その広さは、発電設備含め約6,000haに及ぶ     HySTRA 提供
今年4月、神戸で岸田文雄首相やHySTRA参加企業の社長ら約50人が出席、実証実験成功の記念式典が行われた。
HySTRAの担当者はJ-Storiesの取材に対し、「今回の実証実験で、水素を作ることから貯めることまで、国境を越えた供給ルートを構築できたことに大きな意義を感じている」とし、「今後、より大型のサプライチェーンを構築して、水素のコスト低減につなげ、広く流通させていきたい。実現できれば地球温暖化にも貢献できる」と話している。
記事:澤田祐衣 編集:北松克朗 
トップ写真:dolgachov/Envato
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