J-STORIES ー クリーミーな艶や高い透光性を持つ磁器として知られるボーンチャイナを無駄に廃棄せず、その成分を利用して肥料に生まれ変わらせようという新しい循環型ビジネスが動き出している。
リン鉱石がとれない日本は、国内で必要とするリンの全量を中国など海外からの輸入に頼っており、肥料相場の上昇による影響を受けやすい。一方、日本の食器業界は安い海外製品に押されて縮小が続いており、新型コロナウイルスの感染拡大による外食産業の不振が食器需要の低下に拍車をかけた。
創業100年を超える同社が新たなチャレンジに乗り出したのは、食器業界の先行きと日本のリン調達の将来に危機感を抱いたからだった。
「弊社がこれからの100年間にも継続して事業を進めていくためには何が必要か。それを見つめ直したところ、経営理念にもあるように、環境にも配慮した事業を行っていくことが私たちの存在意義だと改めて方針を決めた」と、同社でマーケティングを担当している小林規子さんはJ-Storiesに語った。
同社では現在、製造検査ではじかれて市場に出せなくなった製品の回収と肥料へのリサイクルを行っている。今後はホテルやレストランで使用済みとなった自社製品の回収と肥料への再利用、さらには他社製品の回収、リサイクルも視野に入れている。
ボーンチャイナから生み出した肥料で農家が野菜を作る。その野菜をレストランが調理し、ボーンチャイナの皿で顧客に提供する。レストランのボーンチャイナが割れたりして使えなくなれば、新しい肥料として再生し、また野菜作りに活用する。ニッコーが思い描くボーンチャイナの循環型ビジネスでは、こんな形で洋食器メーカー、農家、レストラン、消費者がつながっていく。
他社製品の回収、リサイクルに関しては、品質検査が厳しい肥料だけではなく、道路の舗装材などへのリサイクルも考えているという。
ボーンチャイナのリサイクルを海外展開するかどうかについて、同社の研究開発本部長である滝本幹夫さんは「肥料の(安全)基準は国ごとに異なっているので、自社だけで各国ごとの基準に合った肥料を作っていくことは難しいが、様々なパートナー企業を巻き込みながらこの活動を広めていきたい。」と話している。
記事:澤田祐衣 編集:北松克朗
トップ写真:ニッコー 提供
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