J-STORIES ー 水分を含んだ食品廃棄物を発酵技術によって腐りにくくし、養豚の飼料として再生させるユニークな加工プラントが今年、熊本県阿蘇市に出来上がる予定だ。この施設には農場も併設されることになっており、完成すれば家畜の排せつ物を農作物の肥料に活用できる。フードロス対策を家畜と農作物の生産に結び付ける循環型エコシステムを実現しようという試みだ。
新工場をデザインしているのは、畜産・飼料設備などの設計やコンサルティングを行っているコーンテック(熊本県・熊本市)。同社は、AI(人工知能)活用などによる畜産の効率化や飼料配合の改善支援に加え、飼料調達を現在の輸入依存ではなく、国産品を活用する「地場循環型」に転換する新たな取り組みも始めている。
レストランや家庭から出た生ごみの水分比率は80%にもなると言われるほど多く、腐りやすいため飼料にするのは難しい。同社が考案したのは、発酵させることで飼料として加工する方法だ。年間522万トンにのぼると言われる日本国内の食品廃棄物を活用すれば、必要量を輸入に頼らず確保できる、という。
同社CEOの吉角裕一朗がこうした構想に至った背景には自身の経験もある。コンサルティングをする中で、飲食店で余ったパンの耳を餌として提供したいと顧客から養豚場の紹介を求められることが多かった。フードロス問題と飼料生産をつなぐプロセスの必要性を感じたという。
しかし、廃棄される食品を飼料として再利用するには、その中に含まれる水分の処理が課題になった。同社は熊本県阿蘇市の養豚場・阿蘇ファームから敷地を借り、独自の発酵プロセスを取り入れた独自の飼料製造装置を設置する計画。原材料の腐敗を抑え、家畜の餌として再利用するエコシステムをめざす。
新工場では同社が自社開発した養豚用AIカメラ「PIGI」も活用する。PIGIは写真を撮影するだけで豚の体重を測ることができる。今後改良を加え、撮影画像の3Dデータから豚の体格や成長を推測し、適切な栄養素を示す機能も加える予定。飼料製造装置とも連携させ、廃棄食料等の配合設計をPIGIで提示させていきたい、と吉角さんは話している。
記事:澤田祐衣 編集:北松克朗
トップ写真:5PH / Envato
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