J-STORIES ー 新型コロナウイルス規制の緩和や、2022年以来続いている円安などの後押しを受け、東京が世界の観光都市としての存在感を高めている。
市場調査会社による昨年度(2023年)の世界の観光都市ランキングにおいて、東京都は2022年度の20位から一気に4位にまで躍進し、東京都の発表でも外国人観光客数、観光消費額のいずれも過去最高を記録した。
こうした中、日本が誇るデジタル技術を駆使して新たな観光資源をつくり、東京の国際観光都市としての競争力を更に強化する試みとして、東京都が始めているのがプロジェクションマッピングだ。
プロジェクションマッピングは、東京都庁第一本庁舎の東側壁面にて行われている。誰でも無料で観覧でき、荒天時を除き、毎日日没以降に数回の上映が行われている。

幅110メートル、高さ126メートル(約14,000㎡)の巨大な壁面に、40台のプロジェクターで投影されており、「最大の建築物へのプロジェクションマッピングの展示(常設)」として、ギネス世界記録にも認定された。

投影される内容は多彩で、100メートル近くあるゴジラが都庁に襲いかかる「ゴジラ都庁襲撃」や、自然と人間の調和をテーマにした最新作「シナジー」などこれまで10作が作られている。

こうした投影は早くも海外観光客などの関心を呼び、もっとも人気の高いゴジラの投影は一日に約1万人を集客するなど、投影開始から4か月で延べ約24万人が観覧に訪れる東京の新たな観光スポットとなっている。


オーストリアから家族で観光で来たというサム・メドリーストさんは、「昼はスカイツリーで観光し、ここの噂を聞いて夜の観光をここにすることにしました。ショーを楽しめました」とJ-STORIESに満足そうに話した。
またウェブサイトを見て知り、トルコ人の友人と一緒に観覧に来たチャン・ユーさん(台湾)は、「これほどの大きいスケールのプロジェクションマッピングは始めて」だとして、「ぜひ友達にも勧めたい」と話した。
こうした巨大なプロジェクションマッピングを製作・投影するのにかかる予算は年間で約7億円で、SNSなどでは無駄遣いだ、などという批判も出ている。

これに対して、東京都はJ-STORIESの取材に対し、プロジェクションマッピングは、「高い芸術性と世界をリードする技術によって都市の価値を高める日本のキラーコンテンツであり、東京の有力な観光資源としての活用が不可欠」だと反論。「世界の都市総合力ランキング」では、東京は総合で3位であるにも関わらず「ナイトライフ充実度」となると30位と低く、「東京の更なる魅力の向上には、夜間観光の振興の活性化が重要だ」と必要性を訴えた。
なお、都庁の庁舎の中では終日遮光カーテンがかかっているため、プロジェクションマッピングが始っても業務には支障はないようだ。日没以降に仕事を続けている都職員は、カーテンの隙間から少し漏れ入ってくる光と音で始まったということは分かるものの、特に気にせずに残業を行っているという。
記事:一色崇典 編集:前田利継
トップ写真・動画: アデリーナ・バンチャ 撮影
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