J-STORIES ー 水耕栽培と淡水魚の養殖を組み合わせた「アクアポニックス」を活用し、持続可能な農業と障害者や高齢者などの雇用推進を同時に実現をめざす動きが広がり始めている。農業と福祉を組み合わせて社会参加を広げる「農福連携」は農林水産省も奨励する事業。一般的な農業よりも就労しやすいアクアポニックスには、その担い手としての可能性が期待されている。
アクアポニックスは土を使わないため、屋内や都市部などの狭小地でも導入が可能だ。慣行農法と比べて使用する水や肥料などが少なく、環境への負荷が低い。農薬や化学肥料を使わないため、生産物の安全性も高いという。また生産管理をシステム化しやすく、障害者や高齢者が働き手として参加することも比較的容易だ。
都市農業や家庭菜園としても広がりをみせており、調査会社Report Oceanによれば、世界でのアクアポニックス栽培の市場は2026年までには10億1900万ドルに達する見込みだという。
「アクアポニックスで地球と人をHAPPYに」をビジョンに掲げるアクポニ(神奈川県横浜市)は、日本で初めてアクアポニックス事業を専門で展開した企業。農場プランやユニット型システムなどを扱っており、全国各地の障がい者支援施設などに農福連携を視野に入れた事業としてシステムを導入した実績も多い。
アクポニが協力した企業のひとつ、今年4月、東京都世田谷区にある「OGAWA COFFEE LABORATORY 桜新町」の屋上に開園した「AGRIKO FARM」も、アクアポニックス農園として農福連携に取り組んでいる。運営するAGRIKO(東京都世田谷区)は、俳優である小林涼子さんが代表取締役を務める。
小林さんは、農業の未来のためには障がい者や高齢者など誰もがボーダレスに働ける環境づくりが必要と考えてAGRIKOを設立、農林水産省が進める「農福連携技術支援者」認定を受けた。
「AGRIKO FARM 桜新町」では、就農を希望する障害者向けに随時体験会を行い、企業とのマッチングを行なっている。これは、障害者雇用立制度の義務を果たすべき企業へ向けて農業に適した人材を紹介、農園の一画を貸し出し、雇用をサポートする仕組み。小林さんはJ-Storiesの取材に対し「長く働き続けられるよう、一人ひとりの適性を見極めながら慎重にマッチングを行っています。企業の方には、ぜひこの仕組みで障がい者雇用を進めてほしい」と語る。
農園ではホンモロコやイズミダイなどを養殖、ハーブなどの野菜を同時に育て、1階のカフェでランチコースの一部として提供されている。「地産地消の上をいく、いわば『ビル産ビル消』。シェフが求めるものを少品種多品目で栽培、養殖できるので無駄がないのも強み」と小林さんは話している。
記事:嵯峨崎文香 編集:北松克朗
トップ写真:Simol1407 / Envato
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