病室からアバターで学校生活

遠隔操作で授業やおしゃべりも自由に

10月 6, 2022
by Ayaka sagasaki
病室からアバターで学校生活
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J-STORIES ー 病気などによる入院で学校に通えなくなった子どもたちが、それまでと同様に授業を受け、友だちとの会話や遊びも続けられる。そんな新しい学校生活の形を遠隔操作のアバターロボットで実現しよう、という取り組みが始まっている。
「病室を教室に変える」を合言葉に新しい支援策を進めているのは、iPresence(兵庫県神戸市)とニューメディア開発協会(東京都中央区)。
入院中の子供たちが自分で選んだアバターをスクリーンに映し出したロボット(テレロボ)を学校に配置し、病院内からパソコンやスマホなどの端末を操作、授業を受けたり、会話をしたり、学校内を動き回ったりする仕組みだ。ロボットや通信の先端技術サービスを手掛けているiPresenceがハードとアプリを開発、ニューメディア開発協会が研究、運営を担当している。
いま教育現場が抱える大きな問題のひとつは、長期入院を余儀なくされている子供たちを取り残すことなく、どのようにサポートするか、という点だ。中学生までは院内学級に通う選択肢もあるが、高校生になると学校との接点が失われてしまうケースも少なくない。
国立がん研究センターの調査によれば、高校生のがん患者の約6割が休学、約1割が退学を経験しているという。休学すると学業の遅ればかりではなく、在籍していた学校の友人たちと疎遠になりがちなこともあり、復学の不安を抱える子どもが多い。
パソコンやタブレットを使って病院内から授業に参加。カメラを通じて、リアルな教室内の様子を感じることができる。 &nbsp; &nbsp;ニューメディア開発協会 提供<br>
パソコンやタブレットを使って病院内から授業に参加。カメラを通じて、リアルな教室内の様子を感じることができる。    ニューメディア開発協会 提供
自走するアバターロボットは、遠隔操作であたかも自分の分身のように動かすことができる。授業中は、黒板の端から端まで自由に首を振って板書を追いかけることも可能。アバターを体育館に移動させて授業を見学したり、別教室での実験に参加したり、昼食時にカフェテリアでクラスメイトと食事をしながら歓談したりすることもできる。博物館などへの課外授業も対応可能だ。
行きたい方向に動くことで、クラスメイトと一緒に移動することもができる。 &nbsp; &nbsp;ニューメディア開発協会 提供<br>
行きたい方向に動くことで、クラスメイトと一緒に移動することもができる。    ニューメディア開発協会 提供
「学校生活の目的は、学習だけではなく、学校生活で先生や友人とコミュニケーションをとることにこそある」と語るのは、ニューメディア開発協会でテレロボのプロジェクトリーダーを務める林充宏さん。
利用するのは高校生だけに限らない。小学校の入学直前に入院することになったある子どもは、テレロボで入学式に参加、病室から小学校生活を開始した。テレロボを通じてクラスメイトに自分の誕生日を祝ってもらうなどの経験を通じて交流を深めた結果、退院後はストレスなく学校に通うことができたという。
ニューメディア開発協会では、近々、病気の子どもだけではなく、不登校や障害者にも対象を広げる見込み。「今後はテレロボに限らず、メタバースなども活用して、学校に通いたくても通えないすべての子どもたちが笑顔で学校生活を送れるような計画を進めている。誰一人取り残すことのない子ども支援の実現したい」と林さんは話している。
記事:嵯峨崎文香 編集:北松克朗 
トップ写真:halfpoint / Envato
この記事に関するお問い合わせは、 jstories@pacificbridge.jp にお寄せください。

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上記の記事の内容は、動画リポート(英語)でもお伝えしています。

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