[Tokyo Updates] 核融合発電で目指すクリーンで安全な未来のエネルギー

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15時間前
by Tokyo Updates
[Tokyo Updates] 核融合発電で目指すクリーンで安全な未来のエネルギー
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J-STORIESは、オンラインマガジン「TOKYO UPDATES(東京アップデーツ)」とのコンテンツ提携を開始しました。「TOKYO UPDATES」は、ライフスタイルから、SDGsをはじめとする先進的な取り組みまで、グローバル都市「東京都」の魅力を伝えるメディアです。J-STORIESでは、「TOKYO UPDATES」のコンテンツの中から、問題の解決策に焦点を当てた記事をピックアップし、東京から生まれる創造的な解決策や画期的な取り組みを紹介します。

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国内外の投資家を対象に開催された「Investor Day Associated with SusHi Tech Tokyo」のピッチコンテストで見事最高賞を受賞したのは、世界初の定常核融合炉の実現を目指す「株式会社Helical Fusion」だった。同社が描く未来とは。共同創業者である代表取締役CEO田口昂哉(たかや)氏に聞いた。
「GRAND PRIZE」を受賞後、ステージにて田口氏(左側)とCIC Tokyo の名倉氏.            TOKYO UPDATES 提供 (以下同様)
「GRAND PRIZE」を受賞後、ステージにて田口氏(左側)とCIC Tokyo の名倉氏.            TOKYO UPDATES 提供 (以下同様)

安全かつ永続的

 数あるスタートアップの中でも、世界的な課題である脱炭素、そしてクリーンで安全性の高い恒久的な電力供給を目指すHelical Fusionの技術は、海外投資家による厳しい審査において高い評価を得た。では、その定常核融合炉とはどういう技術か。田口氏はこう説明する。
 「すごく簡単に言うと、小さな太陽です。太陽は自発的な核融合で莫大(ばくだい)なエネルギーを放出しています。その太陽エネルギーの超小型版を人工的に作り出すのが核融合炉です」
 定常とは、安定して作動させること。核融合で一瞬だけエネルギーを放出しても意味がなく、そのエネルギーを安定的に継続して電力として活用することが狙いだ。
 「出力できる電力は、われわれがいま設計している最小サイズで50〜100メガワット。これは小型から中型の火力発電所と同レベルです。このくらいの発電力の炉が入る建物の規模としては、小学校の校舎くらいでしょうか。もう少し頑張れば体育館くらいの大きさに収められると思っています」
 何より重要なのは、放射能と放射性廃棄物の問題。原子力発電所との比較だと、東日本大震災の際、福島の原発では地震と津波によって電源が止まったことで核分裂を制御するための冷却水の供給などに問題が起きた。これに対し、核融合はそもそも勝手に反応し続ける性質のものではなく、電源が止まれば反応も止まってしまう。むしろ、いかに反応を起こし続けて継続的にエネルギーを生み出すかが核融合技術の焦点であり、核分裂のような暴走は原理上起き得ない。
 「放射性廃棄物の問題も、原発の場合、使用済み核燃料の処理が致命的なリスクです。何万年も放射線が消えないため、現状では地中深く埋めておくしかない。核融合でも廃棄物は出ますが、こちらは長くても数十年から100年くらいで放射線は収まるので、その後で鉄系の素材に成型し直し、核融合炉の材料としてリサイクルできる。これも原発との大きな違いです」
 CO2も排出せず、後世に負の遺産をもたらさず、水素などの燃料は海水からほぼ無尽蔵に利用できる。まさに安全かつ永続的な夢のエネルギー。それが定常核融合炉の魅力なのだ
自社の技術こそ未来を開くと力説する田口氏(写真/穐吉洋子)
自社の技術こそ未来を開くと力説する田口氏(写真/穐吉洋子)

10年後の発電開始を目指す

 田口氏は、実は研究者でも技術者でもない。メガバンクなどで金融実務の経験を積み、M&Aやスタートアップ立ち上げなどにかかわり、ファイナンスにも詳しい。縁あって定常核融合炉の実現を目指す研究者と知り合い、それまでのキャリアを捨てて2021年10月、Helical Fusionの共同創業という道を選んだ。
 「研究開発や核融合開発に対する非常に強い熱意をもつ一方で、研究者には経営やファイナンスの知識はありません。それがネックになって、人類にとって夢のような技術開発が埋もれてしまうのはあまりにももったいない。そんな思いで共同創業することを決め、核融合の世界に飛び込んだのです」
 現在、定常核融合炉の実現に取り組んでいるスタートアップは世界でも数社程度、日本ではHelical Fusionしかない。そのなかで技術的にはトップランナーであると、田口氏は自信たっぷりに言う。
 「核融合炉の型式は複数ありますが、世界的に研究が進む磁場閉じ込め方式にはさらにトカマク型とヘリカル型の2種類があります。研究現場での世界の主流は前者で、日本で後者を推進しているのは弊社だけ。ただ、前者の技術にはプラズマと言われる核融合反応が起きる部分の温度が非常に高いという特長がある一方で、持続的な運転にはあまり向いていない。これに対し、ヘリカル型は温度は多少低いが、核融合反応を起こすには十分です。そして何より圧倒的に持続的な運転に適している。反応を長時間持続できなければエネルギー供給の点で意味がないため、弊社の技術は定常炉実現に向けて絶対的な優位性があるのです」
 ヘリカルとは直訳すればらせん状の意味。技術への自信が社名にも込められている。2030年までに技術の開発と実証を終え、2034年の発電開始を目指す。
トカマク型とヘリカル型の違い 
トカマク型とヘリカル型の違い 

資金調達の弾みに

 今回のピッチコンテスト最高賞受賞で、100万円の賞金を獲得した。だが、それ以上に意義深かったのは、Helical Fusionの取り組み、技術が海外の投資家に高く評価されたことだと田口氏は話す。
 「技術では最前線を走っている自負がありますが、資金調達力ではやはりアメリカの企業に後れをとっています。今回の受賞がその弾みになると期待していますし、実際すでに反響もあります」
 同時に、今後のSusHi Tech Tokyo、および主催する東京都の取組にも大きな期待を寄せている。
 「アジア最大規模ですから、世界からの注目度も高い。われわれスタートアップにとっては、海外投資家からのアプローチを受ける機会としてとても貴重なので、ぜひ継続していただきたいです」
定常核融合炉のイメージ
定常核融合炉のイメージ

田口昂哉

京都大学大学院文学研究科(倫理学)修了。みずほ銀行、国際協力銀行(JBIC)、PwCアドバイザリー(M&A)、第一生命、スタートアップCOOなどを経て株式会社Helical Fusionを共同創業。
京都大学大学院文学研究科(倫理学)修了。みずほ銀行、国際協力銀行(JBIC)、PwCアドバイザリー(M&A)、第一生命、スタートアップCOOなどを経て株式会社Helical Fusionを共同創業。

株式会社Helical Fusion

Sustainable High City Tech Tokyo = SusHi Tech Tokyo は、最先端のテクノロジー、多彩なアイデアやデジタルノウハウによって、世界共通の都市課題を克服する「持続可能な新しい価値」を生み出す東京発のコンセプトです。
取材・文/吉田修平
画像類提供/株式会社Helical Fusion
写真/穐吉洋子
「このコンテンツは、TOKYO UPDATESとのパートナーシップにより提供されています。」

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