ロシアのウクライナ侵攻、エネルギー安保に試練

ロシアのウクライナ侵攻、エネルギー安保に試練

日本は水素開発で主導権も - 田中伸男・元IEA事務局長

By Sayuri Daimon
J-STORIES ー ロシアによるウクライナ侵攻は、ロシアの石油や天然ガスに頼る欧州などのエネルギー供給体制を揺るがしている。国際エネルギー機関(IEA)の田中伸男元事務局長はJ-Storiesとのインタビューで、対ロ依存度の高いドイツは「原子力について、もう一度考え直さざるを得ない」と指摘。日本については今後の政策として、クリーンな火力発電を実現できる水素利用の推進を「非常に重要なエネルギー分野での貢献」として挙げた。
原発管理を強化する対策の一つとして、環境問題や安全への意識が高い女性人材の活用が必要と話す田中伸男・元国際エネルギー機関(IEA)事務局長  同氏提供写真
原発管理を強化する対策の一つとして、環境問題や安全への意識が高い女性人材の活用が必要と話す田中伸男・元国際エネルギー機関(IEA)事務局長  同氏提供写真
●ロシアから日本への石油とガス、「代替はそう難しくなくできる」
田中氏は日本の対ロ依存について、石油は約4%、ガスは8%、石炭は14%程度にとどまっており、「代替しようと思えば、そう難しくなくできる」と指摘。日本政府や商社などが出資してきた「サハリン1」と「サハリン2」からの供給は、日本の投資金額をロシア側が現物で返却する方式で、ガスと石油に日本が追加的に支払っているわけではない、と述べた。
一方、欧州は3割から4割以上も依存しているため、ロシア産ガスの供給が止まれば、「相当に厳しい冬の寒さと経済の悪化を耐えなくてはいけない」。しかし、欧州はロシアにとって天然ガス供給の7割を占める大市場であり、欧州がロシア産ガスの輸入を止めた場合、ロシアに対して「非常に効く制裁になる」と語った。
ウクライナ侵攻を機にIEAでもエネルギー安保の強化を求める声が強まっているが、同時に地球環境に配慮する政策との両立が必要だ。田中氏は自然エネルギーによって水を分解して作る水素の活用が日本にとっての重要課題と指摘。日本は火力発電への活用などを推進することで、「エネルギー安保と同時に、地球環境にも優しいエネルギー体系を作るための世界のリーダーになりうる」と述べた。
●日本の原発利用、女性主導ならば世論の理解も
ドイツは今年末までに原発をすべて稼働停止にする計画になっているが、田中氏はメルケル前政権下で国民に忖度して原発政策を変えた結果、ロシアへのガス依存が増え、「地政学的な変化にきわめて脆弱なドイツを作ってしまった」と指摘。これを教訓として「ショルツ現政権は、原発については、もう一度考えなおさざるを得ない」との見方を示した。
日本については、「きれいな電源として原子力の役割は十分にある」としながらも、「持続可能なエネルギーとして原子力を使うための条件がある」と述べた。その条件として、事故リスクを抑えられる小型炉の利用、使用済み核燃料の再処理の推進、核燃料の兵器転用がしにくい技術の開発を挙げた。
また、原子力利用政策や電力会社の原発運営において、環境や安全にやさしい女性の視点を反映すべきだと指摘。「女性が持っている安心、安全への感性は非常に重要。女性に受け入れられるような原子力利用であれば、安心感を高め、国民にも受け入れてもらえるだろう」と期待を示した。
新潟県にある日本最大の原発、東京電力の柏崎刈羽原発は、テロ対策の不備など様々な問題で再稼働の是非をめぐる厳しい議論にさらされている   東京電力ホームページより
新潟県にある日本最大の原発、東京電力の柏崎刈羽原発は、テロ対策の不備など様々な問題で再稼働の是非をめぐる厳しい議論にさらされている   東京電力ホームページより
記事:大門小百合 編集:北松克朗 
トップ写真:SeanPavone/ Envato
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