JSTORIES ー 韓国のK-POPや映画が政府の積極的な後押しを受けて世界規模での成功を成し遂げたように、日本政府も国内発のアニメ制作などソフトパワーの成長支援に本腰を入れつつある。
こうした中、『東京がアニメーションのハブになる』を合言葉に、世界の優れたアニメーターを招待して、国内未上映の海外アニメ作品の上演や、国内アニメ関係者と海外アニメーターとの交流などを行う国際イベント「東京アニメアワードフェスティバル(TAAF)2025」が3月7日〜10日まで池袋で開催された。
TAAFは今年で12回目の開催となる国際アニメ映画祭。国外で作成された高いクオリティとオリジナリティに富む優れた作品の上映会を中心に、国内外のアニメファンやクリエイターが交流することで刺激を与え合い、東京を舞台に、新たなアニメーションを世界に発信していくことを目指している。
今年は、73の国と地域から、1,031作品(長編34作品、短編997作品)の応募があり、長編アニメ部門では、フランスのジャン=フランソワ・ラギオニ監督のボートインザガーデン(A Boat in the Garden)がグランプリを受賞、短編アニメーション部門では、英国のジョニー・イブソン監督の一人ぼっちの洗濯(Loneliness & Laundry)が受賞した。

セレミニーに出席した小池百合子都知事は「アニメ・マンガは、世界各国で子供から大人まで愛されている、日本が育てているキラーコンテンツ。このフェスティバルをきっかけに、数多くのアニメーターが世界で活躍していることをとても嬉しく思う」と述べ、イベントがアニメ業界に世界中から新たな人材の発掘や育成のきっかけとなっていることを強調した。

日本政府は、2033年までに今の倍を上回る50兆円以上の経済効果を生み出すことを目指し、コンテンツの海外展開やインバウンドの拡大などを狙う「クールジャパン戦略」を2024年6月にまとめている。
その中で、牽引役を期待されているのが、アニメだ。昨年末に発表された調査では、アニメ産業の市場規模は海外展開の好調さなどから過去最高を更新し、初めて3兆円を超えるなど、世界への影響力を拡大している。

一方で、順調な成長を続ける日本のアニメ業界が、世界のハブとなる為には、幾つかの課題も残っている。
劣悪な状態に置かれているアニメーターの制作環境の整備もその一つだが、その他にも国内市場向けに制作されることが多く、国際市場向けの作品が限られていることや、外国資本や、国際的なアニメ制作への人材や技術が不足するなど、世界のアニメ産業をリードする為のグローバル環境が整っていない現状がある。
「アニメアワード」は、特にこうした現状への改善を試みる取り組みの一つとして、業界内で注目されている。
『アンジェロと不思議の森』を監督したクリエイターのアレックス・デュコールさんは、自作が映画祭で上映されたことを喜ぶ一方で、「競争が厳しいこともあり、日本では海外のアニメがなかなか受け入れられないという現実がある。日本のプロダクションや、アニメーターと交流したいが、イベントではなかなかそのような機会はなかった」と語り、日本で海外のアニメを売り込むことの難しさと更なる協力体制の強化を呼びかけた。

こうした中で、日本側の制作会社側は、海外進出への積極姿勢を強めている。
バンダイナムコフィルムワークスの IP制作本部で制作マネージメントなどを担当している井上喜一郎 デピュティゼネラルマネージャーは、J-STORIESの取材に対し「(日本のアニメにおける)世界中で認知されているIP(知的財産)は、まだまだ少ない。国内アニメのポテンシャルは、シェアはすごく高いけれども、世界中のシェアで考えると、まだまだ低いので、もっともっと広がる余地があると思っている」と話し、アニメの海外展開は今後も力を入れるべき、一番大きなミッションになっていると力を込める。

井上さんの会社では、海外との共同制作を初めており、「今後も同様の連携をその他の国とも強めていきたい」と期待を示した。
記事:一色崇典
編集:北松克朗
トップ写真:東京都 提供
この記事に関するお問い合わせは、jstories@pacificbridge.jp にお寄せください。
***
本記事の英語版は、こちらからご覧になれます。