J-STORIES - 空気中の水分を飲料水に変えるAWG(Atmospheric Water Generator、大気水生成装置)市場で、日本のベンチャー各社が独自のビジネスを展開している。AWGは被災地の断水や乾燥地域での生活などへの支援策となるだけでなく、一般家庭での利用にも拡大余地は大きい。各社は浄化機能の強化や旨み成分の改善など様々な付加価値も高め、今後の成長が見込まれる新市場において需要の取り込みにしのぎを削っている。
●水分の抽出技術にも独自性
「泉せせらぎ」という商品名でAWG事業を手掛けているAi Heart Japan (愛知県安城市)は、他社の多くが採用している冷媒式(取り込んだ空気を一気に冷やして結露させる方式)ではなく、独自の吸着式(空気中の水分を特殊なフィルターに吸着させる方式)を採用している。
冷媒式は気温が低い寒冷地などでは稼働しにくい面もあるが、同社専務取締役員の蜂須賀 元希さんはJ-Storiesの取材に対し、吸着式は「気温が摂氏1度でも水を生成できる」と自社製品の利点を説明する。同社では産業用として1000-2000リットルの水生成ができる大型製品も開発中だ。
一方、冷媒式製品「エアリス」を展開するアクアテック(東京都品川区)は、一般家庭用から産業用まで製品をそろえ、省エネ機能を強化した新型エアリスを今年の7月に販売する予定。同社の営業担当、天野鉄矢さんによると、冷媒式は製造コストと価格を抑えることができるほか、一度に生成できる水量が多いなど、利用者にとってメリットが大きいという。
●浄化機能強化や美味しさも重視
AWGサービスの品質を決める条件の一つは、空気から抽出した水分の品質管理だ。 「無限水」ブランドで事業展開するENELL(東京都港区)は、水分子だけが通過できる逆浸透膜フィルターを採用し、高い浄化機能を実現した。さらに、生成した水をミネラルフィルターに通すことで、マグネシウム・カルシウム・鉄・ナトリウム・カリウム・亜鉛の6種類のミネラルが配合され、水の旨みを高めた。「無限水」は健康効果があるとされる水素水も生成できるという。同社の代表取締役 赤石太郎(Akaishi Taro)さんはJ-Storiesの取材に対し、厚生労働省が水道水の水質基準を大幅に規制緩和したことがきっかけで、不安から無限水に対する問い合わせが増えたと応えた。
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●空気清浄などの付加価値も
AWGは日本だけでなく、米国、中国、イスラエル、インドなどでも技術開発や製品展開が続いている。日本勢は国産品の安全性などをアピールするとともに、様々なニーズの取り込みや水生成以外の付加価値にも力を入れている。
アクアム(東京都港区)では、1日約10,000リットルの製水が可能な大型装置を含め産業用から家庭用まで各種製品を揃え、今後は車載タイプなどさらにラインナップを広げる方針。デンケン(大分市由布市)の「OISHII AIR(オイシイエアー)」は飲み水の生成だけでなく、同時に空気清浄と除湿機能を備えた利便性が大きな特徴となっている。
記事:高畑依実 編集:北松克朗
トップ写真:deyangeorgiev/ Envato
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