J-STORIES ー 宇宙空間で太陽光エネルギーを集めて発電し、地上に送って電気として活用する「宇宙太陽光発電」の実現をめざし、文部科学省と宇宙航空研究開発機構(JAXA)が来年度に宇宙空間で太陽光パネルを展開して実証実験を始める。
宇宙太陽光発電は地球上の気象条件に左右されず、より高い効率で太陽光エネルギーを確保し発電できる。二酸化炭素(CO2)などを出さない「夢の発電システム」とも呼ばれる。
日本政府は温室効果ガスの発生量と吸収量を均衡させて実質排出ゼロにする「カーボンニュートラル」を2050年までに達成する目標を掲げている。その有効策として構想されている宇宙太陽光発電について、政府の宇宙開発本部は昨年6月末に「実用化に向けて取り組みを強化していくことが求められる」との方針を確認した。
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JAXAによると、実証実験のため太陽光パネルを静止衛星軌道に運ぶ新型宇宙ステーション補給機「HTV-X」1号機は来年度に打ち上げられる予定だ。宇宙太陽光発電の開発は多額のコストや技術の難しさから各国が失速する中、取り組みを続けてきた日本の研究が世界で最も進んでいるという。
しかし、実用化までの道のりはまだ遠い。太陽光エネルギーが生んだ電力は宇宙からマイクロ波で地上に送られ電気に再変換される仕組みだが、マイクロ波の長距離伝送にはなお技術的な壁が高い。巨大な太陽光パネルの運搬コスト、大規模な宇宙構造物の構築など膨大なコストも避けられない。

宇宙太陽光発電システム(SSPS)の大型宇宙構造物の構築を研究しているJAXAの上土井大助さんは「SSPSの実現までには超えるべきハードルがまだ多くあるが、今回の実証を第一歩として、着実に研究開発を進めていきたい」とJ-Storiesの取材に答えた。
マイクロ波伝送技術は宇宙太陽光発電だけでなく幅広い産業利用が期待できるため、米国や中国も開発を強化するなど、実用化への国際競争も激しさを増しつつある。
記事:高畑依実 編集:北松克朗
トップ写真:picturepartners/Envato
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