J-STORIES ー 農作物が育つ良質な土壌作りには通常、3年から5年の時間が必要とされるが、その期間を1か月に短縮できる効率的な人工土壌が実用化され、地上での農耕だけでなく、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などが主催する月面基地での農地開発にも利用が検討されている。
自然の土壌では硝化菌と呼ばれる微生物などが有機物を分解して無機養分を生成、それを吸収して農作物が育つ。しかし、良質な土壌が出来上がるまでに数年かかるうえ、土壌内に病原菌が増えた場合は休耕が必要だ。
愛知県にある名古屋大学発のスタートアップ企業、TOWINGが実用化した人工土壌「高機能ソイル」は土作りの期間を大幅に縮め、休耕日の削減も可能にした。
従来の人工土壌では有機肥料が腐りやすいという制約があった。しかし、高機能ソイルは有機肥料を高い効率で養分に変えることができるため、化石燃料を使う化学肥料への依存を減らすこともできる。また、炭素の固定や吸収効果も期待できるため、環境負荷が少なく持続可能で循環型の農地作りができるという。
TOWINGは、高機能ソイルを使って循環型農業の発展と宇宙農業の実現をめざす次世代の作物栽培システム「宙農(そらのう)」の開発・販売を進めている。22年春には愛知県刈谷市内で休耕地を借り上げ、5千平方メートル規模の自社農園も始める。20年秋からはJAXAなどが主催する月面基地での農業計画にも加わっている。
記事:澤田祐衣 編集:北松克朗
トップ写真:https://towing.co.jp
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