J-STORIES ー なめらかに言葉を話せない吃音を持つ若者たちが働く「注文に時間がかかるカフェ」が全国に広がりつつある。期間限定で開かれるイベントだが、吃音があっても接客の仕事に取り組んでみたいという夢がかなう場としてドキュメンタリー映画の上映も決まり、海外でも紹介されている。
この取り組みを始めたのは奥村安莉沙さん。吃音を持っているため、カフェの店員になる夢を一度は諦めたが、26歳の頃にオーストラリア・メルボルンのカフェで障害や病気のある人、ホームレスの人たちとともに働き、「帰国したら吃音があっても接客に挑戦できるカフェをやりたいと思った」という。
このカフェは常設ではなく、HPを通じて学校や施設、企業から出張依頼を受け、期間限定で開く。接客の夢があるものの吃音のために一歩を踏み出せない高校生、大学生をスタッフとしてSNSで募集する。開催場所のご当地食材を使い、吃音をテーマにしたオリジナルドリンクを考案するなど、スタッフが準備段階から関わることが多い。運営費用は出張先の団体や、クラウドファンディングで募集したサポーターなどからの出資によってまかなわれている。
2021年8月、東京都世田谷区で第1回目を開き、今年12月3日の福岡開催を含めると、全国8地区、合わせて10回実施された。23年もすでに予定がある。
準備段階から開催後までの様子をドキュメンタリー映画として上映することも決まった。「注文に時間がかかるカフェ―僕たちの挑戦―」は文部科学省選定映画として10月からYouTubeで予告編を公開、12月に報道関係者にむけて試写会を開催し、23年2月からミニシアターや学校、施設などで上映会を行う予定だ。
「自分たちの挑戦のありのままを映画にして、吃音で悩む同世代や子供を勇気づけたいと、ナレーションから主題歌まで若者たち自身が手作りで行なった」と奥村さんは語る。
国内で話題が広がるのみならず、11月にはヨーロッパで最も発行部数が多いとされるドイツの週刊誌Der Spiegelにも紹介された。奥村さんはJ-Storiesの取材に対して「多くの方に吃音の理解を深めていただき、地域にも支援の輪が広がっている。接客に挑戦したい吃音の若者は日本全国にいるので、さらに活動の輪を広げて行きたい」と語っている。
記事:嵯峨崎文香 編集:北松克朗
トップ写真:ijeab/Envato
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