紙のリサイクルがオフィス内で可能に?

既存の現場での紙リサイクルと抗菌技術を組み合わせた新装置を開発

11月 17, 2022
by Ayaka Sagasaki
紙のリサイクルがオフィス内で可能に?
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J-STORIES ―感染防止策として「紙の衛生管理」が求められる中、オフィス内で古紙を分解し、抗菌紙として再生産するシステムが登場しそうだ。
使用済み古紙をオフィス内でリサイクルできる小型製紙装置「レコティオ」を製造するデュプロ精工(和歌山県紀の川市)がこのほど大手製薬会社、小林製薬と技術提携し、再生紙に抗菌機能をプラスする技術の開発をスタートした。 
これまでに使われてきた抗菌紙は用紙の表面に抗菌剤入りのニスをコーティングする製品だった。新型レコティオは、古紙を分解し新しい紙として製紙する段階で小林製薬の抗菌剤「コバガード」を混ぜ、再生紙そのものに抗菌機能を付与することができる。
現在、既存の小型古紙再生機「レコティオ」のメーカーであるデュプロ精工と大手医薬品メーカーの小林製薬が共同で開発を進めています 。
小型製紙装置レコティオは給排水設備があればオフィス内に設置できる。     デュプロ精工 提供<br>
小型製紙装置レコティオは給排水設備があればオフィス内に設置できる。 デュプロ精工 提供
世界初の「紙の洗濯機」として、レコティオが登場したのは2011年。2020年には、環境対策に貢献する技術や製品開発などに与えられる第47回環境賞「優秀賞」を受賞した。 
「紙の洗濯機」が使うのは水と少量の界面活性剤のみ。オフィスの古紙を繊維レベルまで分解、界面活性剤による泡でトナー成分を除去するのが同社独自の技術だ。文字情報を完全に抹消するため機密保持にも適しており、繊維そのものを劣化させず繰り返し白い再生紙へとリサイクルできる。
レコティオは洗濯機のように水で紙をほぐして再生する。繊維を分断しないため繰り返し同等品質の再生紙ができる。     デュプロ精工 提供&nbsp;<br>
レコティオは洗濯機のように水で紙をほぐして再生する。繊維を分断しないため繰り返し同等品質の再生紙ができる。 デュプロ精工 提供 
デュプロ精工によると、レコティオは年間でA4サイズ300,000枚の古紙を再生できるため(1か月に20日稼働した場合)、通常1本の植林木(直径20cm、高さ20m)からできる紙の枚数を13,000枚として、約23本の木を節約できるという。二酸化炭素の発生量は製紙工場で100%の再生紙を生産する場合に比べ、約14%削減できる計算だ。
一方、コバガードの抗菌/抗ウイルス技術は、元々、潜水艦の閉ざされた空間でカビなどの微生物の増殖をコントロールするために開発された。これまでにもアパレル、い草製品、空気清浄機の加湿フィルターなどに活用されている。
レコティオ開発担当の長田優輔プロジェクトリーダーはJ-Storiesの取材に対して、「使用済みコピー用紙やシュレッダーゴミは業者により回収、処理されるが、レコティオで再生すれば焼却やトラックによる運搬もなく、さらにCO2発生の抑制に貢献できる」と指摘する。
また同社マーケティング担当の中村智哉グループリーダーは、ペーパーレス化が進んでも「紙の必要性は残るはず。オフィス内で再生し環境に負荷をかけずに使い続ける技術を海外でも広く活用してほしい」と語っている。
記事:嵯峨崎文香 編集:北松克朗
トップ写真:Elegant01/Envato
この記事に関するお問い合わせは、jstories@pacificbridge.jp にお寄せください。

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