アフリカの農村を「スマートビレッジ」に

デジタル化で娯楽、教育、医療など生活改善を支援

11月 3, 2022
by yui Sawada
アフリカの農村を「スマートビレッジ」に
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J-STORIES ー 大きな成長力を秘めたアフリカの可能性を支えようと、農村部での情報通信インフラづくりを進めている日本のベンチャー企業がある。経済面、情報面ともに都市部との格差が広がっている農村にデジタルサービスの利用環境を広げ、動画視聴、オンライン教育、遠隔医療などさまざまなサービスを享受できる「スマートビレッジ(Smart Village)」を実現しようという取り組みだ。
このベンチャー企業は、バックパッカーとして世界各国を回り、ビジネスでも海外の新規を多く手掛けてきた大場カルロスさんが昨年10月に設立したDots for(東京都港区)。西アフリカのベナンで事業を開始、現在はセネガルも含め、創業から約1年で50以上の村にインフラを構築した。年内には100近い村に拡大する予定だ。
同社代表を務める大場カルロスさんは、インターネットのなかった学生時代を振り返り、手に入れられる情報が少なかったと同時に、知る機会があれば10代20代の頃の選択肢が広がったと話す。&nbsp; &nbsp; &nbsp;Dots for 提供<br>
同社代表を務める大場カルロスさんは、インターネットのなかった学生時代を振り返り、手に入れられる情報が少なかったと同時に、知る機会があれば10代20代の頃の選択肢が広がったと話す。     Dots for 提供
アフリカ全体でのインターネット接続率は30%以下と言われているが、人口の多くが住む地方の農村部はさらに普及が遅れており、所得水準や地理的な要因が壁になってデジタル化の波から取り残されているという。
同社が進めているのは、村の中に「メッシュネットワーク技術」を搭載した無線WiFiルーターを複数設置する「分散型通信」システムだ。一般的にメッシュネットワークは室内のWiFiの届きにくい部屋や、被災地や野外イベントに一時的なネットワーク環境を設けるためなどに使用される。これを農村に導入することで、無線ネットワークインフラをきわめて安いコストで構築できるという。
スマートフォンを通じて無線ネットワークに接続した住民は、同じく村内に設置されたサーバーに保管されたデジタルコンテンツやサービスにアクセスできるようになった。「農村で生まれたから不利益を被っているという現状」(大場さん)が大きく変わるきっかけになりつつある。
セネガルにて同社サービスを使用する人々。村の規模にもよるが、1つで130〜140cmの距離に電波を飛ばすことのできるメッシュネットワーク機器は、小さい村では1つあれば賄える。&nbsp; &nbsp; &nbsp;Dots for 提供<br>
セネガルにて同社サービスを使用する人々。村の規模にもよるが、1つで130〜140cmの距離に電波を飛ばすことのできるメッシュネットワーク機器は、小さい村では1つあれば賄える。     Dots for 提供
同社がめざしているのは、「2030年までに西アフリカの地方部に住む2億人がインターネットに繋がってその利便を享受できる社会を作る」こと。日本政府からも、同社の事業の実現性や現地の生活を変える可能性を認められており、昨年11月から行ってきたベナンでの事業と今年9月から着手しているセネガルの事業で、経済産業省からの支援を受け、事業拡大を行っている。
事業を広めるにあたって大場さんが大きな課題と感じていることは、「各村にどれだけ入り込めるか」だ。同社は現在ベナン人やセネガル人の現地スタッフ15人がインターネット構築の業務にあたっている。
言語や文化の違いが壁になったり、時として現地民でない「よそ者」は話も聞いてもらえないこともある。同社では現地のマネージャーやスタッフはその地域で生まれ育った人材を採用。地域の雇用の拡大に貢献することで、現地の信頼獲得にも力を入れているという。
同社のベナン初期メンバーと大場(Oba)さん(中央)、COOの中田(Nakata)さん(右)。ローカルチームを組成することで、フランス語とはいえローカルな言語を話すベナンやセネガルでもスムーズにインフラを広げることができる。&nbsp; &nbsp; &nbsp;Dots for 提供<br>
同社のベナン初期メンバーと大場(Oba)さん(中央)、COOの中田(Nakata)さん(右)。ローカルチームを組成することで、フランス語とはいえローカルな言語を話すベナンやセネガルでもスムーズにインフラを広げることができる。     Dots for 提供
大場さんはJ-Storiesの取材に対し、「農村の人の生活の質を上げること」が最終的な目標だと話す。収入を上げる、手に職をつける、教育を受け、よりよい将来を手に入れる、といった生活のステップアップを実現するには、まずは必要なインフラを広げることが第一歩になる、と大場さんは言う。同社では、インフラを広げたうえで、情報を手に入れるためのデジタルプラットホームの構築にも取り組んでいく方針だ。
記事:澤田佑衣 編集:北松克朗
トップ写真:projectUA/Envato
この記事に関するお問い合わせは、jstories@pacificbridge.jp にお寄せください。

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