環境 Aug 30, 2023

土を使わず、水をリサイクルしながら植物と魚を一緒に育てる新型農法で、都市の緑化と地産地消を同時に実現

障害者や高齢者の雇用促進にも。「アクアポニックス」が広げる未来型農業

BY AYAKA SAGASAKI
J-STORIES ー「アクアポニックス」は土を使わず、水をリサイクルしながら植物と魚を一緒に育てることができる次世代の環境保全型農業である。屋内や、ビルの屋上など都市部の狭小地でも導入が可能で、従来の慣行農法と比べて使用する水は少なく、農薬や化学肥料も使わない為、環境への負荷も低く、生産物の安全性も高い。
都市部においては、屋上の緑化により、気温上昇を抑える効果や、食べる直前に収穫できるため、鮮度と栄養密度を最大限に高める地産地消効果も期待できる。
この「アクアポニックス」を活用し、持続可能な農業と障害者や高齢者などの雇用推進を同時に実現をめざす動きが広がり始めている。農業と福祉を組み合わせて社会参加を広げる「農福連携」は農林水産省も奨励する事業。生産管理をシステム化しやすく、障害者や高齢者が働き手として参加することも比較的容易なアクアポニックスには、その担い手としての可能性が期待されている。
屋上庭園 映像.    AGRIKO 提供
アクアポニックスの循環イメージ。植物と魚が互いに支え合って生まれる環境は「小さな地球」にもたとえられる。     AGRIKO提供
アクアポニックスの循環イメージ。植物と魚が互いに支え合って生まれる環境は「小さな地球」にもたとえられる。     AGRIKO提供
世界でのアクアポニックスは都市農業や家庭菜園としても広がりをみせており、調査会社Report Oceanによれば、栽培市場は2026年までには10億1900万ドルに達する見込みだという。
「アクアポニックスで地球と人をHAPPYに」をビジョンに掲げるアクポニ(神奈川県横浜市)は、日本で初めてアクアポニックス事業を専門で展開した企業。農場プランやユニット型システムなどを扱っており、全国各地の障がい者支援施設などに農福連携を視野に入れた事業としてシステムを導入した実績も多い。
アクポニが協力した企業のひとつ、昨年4月、東京都世田谷区にある「OGAWA COFFEE LABORATORY 桜新町」の屋上に開園した「AGRIKO FARM」も、アクアポニックス農園として農福連携に取り組んでいる。運営するAGRIKO(東京都世田谷区)は、俳優である小林涼子さんが代表取締役を務める。
ビルの屋上にあるAGRIKO FARMは、世界でも珍しい屋外型のアクアポニックス農園。気候の影響を受けるため手はかかるが、生命力の強さが期待できるという。     AGRIKO提供
ビルの屋上にあるAGRIKO FARMは、世界でも珍しい屋外型のアクアポニックス農園。気候の影響を受けるため手はかかるが、生命力の強さが期待できるという。     AGRIKO提供
アクアポニックスは魚と野菜どちらも同時に育てられることが魅力。魚の食べたエサの残りや排泄物は、バクテリアが分解すると植物の栄養になり、植物が栄養を吸収することで水が浄化されキレイな水が水槽に戻る。     AGRIKO提供
アクアポニックスは魚と野菜どちらも同時に育てられることが魅力。魚の食べたエサの残りや排泄物は、バクテリアが分解すると植物の栄養になり、植物が栄養を吸収することで水が浄化されキレイな水が水槽に戻る。     AGRIKO提供
小林さんは、農業の未来のためには障がい者や高齢者など誰もがボーダレスに働ける環境づくりが必要と考えてAGRIKOを設立、農林水産省が進める「農福連携技術支援者」認定を受けた。
「AGRIKO FARM 桜新町」では、就農を希望する障害者向けに随時体験会を行い、企業とのマッチングを行なっている。これは、障害者雇用立制度の義務を果たすべき企業へ向けて農業に適した人材を紹介、農園の一画を貸し出し、雇用をサポートする仕組み。小林さんはJ-STORIESの取材に対し「長く働き続けられるよう、一人ひとりの適性を見極めながら慎重にマッチングを行っています。企業の方には、ぜひこの仕組みで障がい者雇用を進めてほしい」と語る。
農園で働く障がい者の方とともに作業を行う小林さん。 AGRIKO提供
農園で働く障がい者の方とともに作業を行う小林さん。 AGRIKO提供
農園ではホンモロコやイズミダイなどを養殖、ハーブなどの野菜を同時に育て、1階のカフェでランチコースの一部として提供されている。「地産地消の上をいく、いわば『ビル産ビル消』。シェフが求めるものを少品種多品目で栽培、養殖できるので無駄がないのも強み」と小林さんは話している。
栽培した野菜や養殖した魚は、カフェのランチコースの一部として提供されている。     AGRIKO提供
栽培した野菜や養殖した魚は、カフェのランチコースの一部として提供されている。     AGRIKO提供
記事:嵯峨崎文香 編集:北松克朗 
トップ写真:Agriko
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