シリーズ: J-STORIES1周年
ESGやSDGsの推進に向け、日本企業や研究機関、スタートアップなどが様々な分野で進めている革新的な取り組みを世界の視聴者やジャーナリスト、投資家に伝える国際ニュースサービスJ-STORIES。J-STORIESでは、1周年を記念して、さまざまな著名人に日本発のソリューションが持つポテンシャルについて話を伺います。
J-STORIES ー 世界的な建築家の隈研吾氏は、自然と技術と人間の新しい関係を切り開く建築を提案し、2020東京オリンピック・パラリンピックの会場となった新国立競技場や、高輪ゲートウェイ駅、スコットランドのヴィクトリア・アンド・アルバート・ミュージアム分館、フランスのサン・マロ海洋歴史博物館など、数え切れないほどの代表作を抱え、現在も30を超える国々でプロジェクトが進行中だ。
国内外で以前から様々なプロジェクトを行なっている隈氏は、J-STORIESのインタビューに対し、ポストコロナの現代は、地球全体の環境と私たちが日々生活している地域の環境とが離れがたく結びついている「環境の時代」だとした上で、「日本は、すごくいいポジションにいる。完全に衰退している対立の状態の中で、日本はある種絶好のポジションを手に入れられるチャンスだ」と語った。
隈氏は、その理由として、「海外から日本の持っている文化が、一種の環境技術だったという見方をされている」として、隈氏自身も、海外に呼ばれてデザインの依頼を受ける時には、日本文化における環境を見せてほしい、建築の中で表現してほしい、と要望されることが多く「世界は日本に対して関心がある。(環境時代に突入した現代は)その意味である種恵まれたタイミングにある」とした。
世界から日本への関心が集まっている一方で、日本の企業や研究機関が従来、比較的、苦手としてきたことが、海外への適切なアピールである。自身の経験を踏まえ、これについて問われた隈氏は、日本独自の文化発信のキーワードとして視覚だけにとらわれず、聴覚、触覚、味覚、嗅覚「五感」全体に直接訴えることを挙げた。
「五感を通じてアピールするもの。味、香りなど、五感を通じてアピールすることこそ、日本文化の持つ深さだと思う。これは、ある意味で、米国、非常に視覚を中心とするハリウッド的な形で世界を引き込むものとは違い、五感を通じて共感を得ていく、というものを出せたら良いのでは」。
隈研吾氏は、昨年12月に発足した産官学労社広民の協働組織体「富士五湖自然首都圏フォーラム」の最高顧問に就任した。
「富士五湖自然首都圏フォーラム」とは、山梨県が、富士山の「世界文化遺産登録10周年」を契機として、日本を代表する観光リゾート地でもある「富士五湖地域」を、新たな時代に求められる「自然首都圏」への発展させることを目指している。
こうした中で、隈氏は、富士山などの日本の観光地を世界にアピールする為に、「水」に注目していると話す。富士山や周辺地域の水は、世界に誇るクオリティであり、自然と調和した景観と言う観点でも水がキーワードになるとした上で、水が「美味しい食」にも繋がる為だ。
「人間の食。食べるということも重要になる。(米国の)ポートランドやシリコンバレーといった面白い場所は食べ物が美味しくなる。富士山の持っている水の力。景観デザインだけでなく、食べ物を中心とする新しい色のネットワークを出せたら面白いのではないか」。
記事:一色崇典
トップ写真:J-STORIES
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