J-STORIES ― 新しい人生の門出となる結婚は祝福と感動に満ちたイベントだ。その素晴らしさを思い返し、幸福感を抱き続けることが円満な結婚生活に役立つのではないか。
そんな考えから結婚のシンボルである「結婚証明書」をまるで1点もののアートのようにデザインし、新居に飾って日々感動を新たにしようという提案が誕生した。
少子高齢化が進む中、日本では婚姻率が低下する一方、離婚率が高まり続けている。社会の多様化を反映し、結婚式をしない選択も増えているが、挙式披露宴を行なったカップルの方が離婚率が低いというデータもある。結婚の感動や挙式の思い出には、結ばれたふたりのきずなを強める大切な役割がある。
このサービスを始めたのは、シンデレラが宮殿の舞踏会に出かけるために乗った「かぼちゃの馬車」というフランス語を社名にしたシャリオ・ド・シトロイユ(chariot de citrouille、 東京都品川区)。世界に1点しかない自分たちだけの「結婚証明書」を販売するために設立されたベンチャー企業だ。
結婚証明書は人前式や教会式の挙式時の演出として取り入れられるもので、法的な効力はない。式の際にはオリジナルの証明書に新郎新婦がサインをし、ゲストに承認の拍手をもらうのが一般的だが、同社では結婚式で使用した後も新居に飾ることのできるアルコールインクアートによる結婚証明書を扱っている。
ふたりだけ、親族だけの小さな挙式やフォトウェディング、挙式披露宴を行わない「ナシ婚」など、結婚の形が多様化する中、たとえナシ婚であっても「結婚のシンボルとなるものがあれば感動をいつも甦らせることができて、毎日の充実につながるのではないか」という考えが、同社代表の日下理奈さんの根底にある。
そもそもは日下さんが自身の結婚式でデザイナーに依頼した証明書を使用したところ、周囲から注目を集めたことがきっかけ。「ゲスト参加型の結婚証明書が流行する中、アルコールインクの結婚証明書がとても魅力的で、挙式に参加した友人からもおしゃれで私らしいと絶賛してもらった」(日下さん)ことから起業を決意した。
額装すればブライダルフォトよりもさりげなく飾ることができて、どんなインテリアにも馴染む。「私自身リビングに飾っているので、ふと目にするたびに結婚した時の感動が蘇り、夫に対しても優しい気持ちになれる。結婚した時の初心に帰って、お互いの思いやりを保つきっかけになれば」と日下さんは期待を寄せる。
同社の結婚証明書は3色のアルコールインクを使用したアート作品がもとになっており、A4の透明アクリルシートを重ねてふたりのサインを書き加えて完成する。 もともと海外で人気の高いアルコールインクアートは、インクなどをドライヤーなどの風で広げ、予測できない模様と色合いを楽しむものだ。
随時、インスタグラムなどで作品の現物写真をアップ、気に入った1点を選んで購入できる仕組み。「結婚に対する思いは世界共通。海外の生活様式にも合うので広く取り入れてもらいたい」と、日下さんは海外にも視野を向けている。
実際にこの結婚証明書の利用者からも、その効果を感じたという声が寄せられている。自分と比べ、夫には結婚の実感があまりないように見えたと言うある女性は、「この結婚証明書にサインして家に飾ることで、夫に結婚生活を続けていこうという気持ちが高まってきたようだ」と話している。
「将来家族が増えた時も、この結婚証明書を目にすることでふたりの原点に立ち返り、結婚の初心を思い起こすことができるのではないか。幸せな家族の未来に貢献できれば嬉しい」と日下さんは願っている。
記事:嵯峨崎文香 編集:北松克朗
トップ写真: シャリオ・ド・シトロイユ 素材提供
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