「脱プラスチック」の新発想で世界から注目 100万回動画再生された紙カミソリ【アップデート】

脱プラで、2030年までにCO2半減目指す

7月 6, 2023
BY YOSHIKO OHIRA
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J-STORIES ー 深刻な環境汚染や、地球温暖化の原因となるプラスチックをできるだけ使わない「脱プラスチック」の動きが世界中で広がっている。プラスチック包装やレジ袋の提供をやめ、カップ、ストローやフォークなどにプラスチックを使わないと言うものだが、創業110年を超える日本の老舗刃物メーカーが開発した製品は、「脱プラスチック」が先行する欧米などでも例がなく「この発想はなかった」と、SNS等を通じて世界から注目を集めている。
刃物メーカーの貝印(東京都千代田区、遠藤浩彰代表取締役社長)が製作、販売しているのは、刃の部分以外をすべて紙で作った「1Dayカミソリ」。
紙カミソリ 作成動画。     貝印 提供
同社によると、プラスチックが使われている従来の使い捨てカミソリは世界で年間160億本も廃棄されているが、1Dayカミソリであれば使い捨ての手軽さを失うことなく、廃棄プラスチックによる環境破壊への対策にもなる。3枚刃のカミソリとその接着部分を除き、すべてを紙製にしたことで、プラスチックの使用量を98%減らすことができたという。
紙カミソリ 商品。     貝印 提供
紙カミソリ 商品。     貝印 提供
2021年4月に同社のオンラインサイトでテスト販売したところ、5色セット(税込み1100円)が3日で完売。紙の本体を折ってカミソリ型にする説明動画はSNSで世界に広く拡散され、Tiktokにおいて紹介動画が再生回数100万回を超える話題の商品となっている。
「紙のアイスクリームスプーンにヒントを得て開発が始まり、試作品の数は100個以上。製品化までには2年かかった」と広報の古井涼子さんは語る。
古井さんによると、1Dayカミソリの購入者は4割が女性。「カミソリというとこれまで男性のイメージが大きかったが、シンプルでジェンダーレスなデザインも、新たな購買につながった」と分析する。紙製品なので薄くて軽く、旅行や携帯用として使ってみたいという声も多いという。
現在、コンビニやドラッグストアなどの小売店で購入できるほか、昨年夏からはホテルなどでの取り扱いも始まった。
紙カミソリ 組み立て方。     貝印 提供
紙カミソリ 組み立て方。     貝印 提供
紙カミソリ 作成動画。     貝印 Youtubeチャンネルより
好評を受けて6月には、安全ガードを刃に取りつけた、顔周りなどの使用に適した別タイプの紙カミソリのテスト販売も開始している。
革新的なデザインは、海外でも評価されており、4月には国際デザイン賞である「DIA中国デザインスマート製造大賞」の銅賞を受賞し、同月、中国の各種百貨店やショッピングセンターで販売も開始したという。
DIA中国デザインスマート製造大賞 授賞式の様子。     貝印 提供
DIA中国デザインスマート製造大賞 授賞式の様子。     貝印 提供
「金属部分の分別まで考えると、安全性の問題などいろいろな課題はあるが、紙カミソリが誕生したことで、新たな環境対応型の商品開発につながっている」と古井さん。同社は「2030年までに紙カミソリの部門でCO2の排出量半減を目指す」としている。
記事:大平誉子 編集:北松克朗
トップ写真:具印 提供
この記事に関するお問い合わせは、jstories@pacificbridge.jp にお寄せください。

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