非常食を活用、子ども食堂のおいしいメニューに

賞味期限を長くしてフードロスを解消

5月 4, 2023
BY AYAKA SAGASAKI
非常食を活用、子ども食堂のおいしいメニューに
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J-STORIES ー 自治体や企業で保存期間が切れた防災用の備蓄食品はどこへ行ってしまうのか。賞味期限前であればフードバンクなどに寄付する方法がある。けれども、賞味期限が切れた食品は産業廃棄物扱いになりそのまま捨てられてしまううえに、廃棄のためのコストもかかる。
防災備蓄品の大量廃棄を回避、フードロス削減と食問題の解決につなげる「サスティナブル防災システム」を提唱するのはグリーンデザイン&コンサルティング(東京都目黒区)。長年、陸上自衛隊の戦闘糧食をはじめ、防衛省などの官公庁、自治体を中心に非常用保存食の納入を行う製造会社「グリーンケミー」(東京都八王子市)の販売部門として2019年に独立した。
7年保存商品の賞味期限を従来の7年6か月から8年6か月に延ばし、回収後に賞味期限までの猶予を持たせることで、全国の子ども食堂やフードバンクへの寄付など有効活用を無理なく行うのが目的だ。
今年4月には防災安全協会主催のSDGs・災害食大賞2023で優秀賞を受賞。お米未来展に出展した。     グリーンデザイン&コンサルティング 提供
今年4月には防災安全協会主催のSDGs・災害食大賞2023で優秀賞を受賞。お米未来展に出展した。     グリーンデザイン&コンサルティング 提供
今年4月には防災安全協会主催のSDGs・災害食大賞2023で優秀賞を受賞。お米未来展に出展した。     グリーンデザイン&コンサルティング YouTubeチャンネルより
同社ではこれまで保存食を販売する際に引き取りを依頼されることが多く、期限切れのものをコストをかけて大量廃棄するしかない現場を目の当たりにして「フードロスをなくすにはまず仕組みづくりが必要」と考えた同社代表取締役の笠浩一郎(Koichiro Ryu)さんが実現させた。
全国に子ども食堂は7,363箇所(2023年2月現在。NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえホームページより)、フードバンクの活動も盛んになるなど、全国で食べることに困る人々の存在は少なくない。同社はフードバンクや各種NPO団体などと連絡し必要なところへ届けるルートを持つ。
「フードロスをなくし、日本製のおいしい食事を必要としているところにリユースする取り組みを話すと、ほとんどの自治体、企業からぜひ参画したいと言ってもらえる」(笠さん)と評判は上々だ。
米国留学中に起業、帰国後も数々のビジネスを手がけて来た笠さん。2011年の震災をきっかけに防災事業に取り組む。     グリーンデザイン&コンサルティング 提供
米国留学中に起業、帰国後も数々のビジネスを手がけて来た笠さん。2011年の震災をきっかけに防災事業に取り組む。     グリーンデザイン&コンサルティング 提供
同社が主力とする7年保存食品は約7年前から販売を開始、今年後半から保存期間満了を迎えるため、賞味期限に猶予のある食品は迅速に寄付先を探して届ける活動を行う.。それに先立ち「都市部のフードバンクには在庫がある一方で沖縄では在庫が少ないという話を聞き力になりたいと考えた」(笠さん)ことから沖縄のフードバンクへ自社在庫を1万6千食寄付する予定だという。
同社はまた、今年1月に「いつでもどこでも、誰でもどの人種でもそのまま食べられる」をコンセプトとする「みんなの保存食」というブランドを新しく発表した。
非常事態の際は、水やお湯の確保も難しいことがあるためそのままおいしく食べられることが重要。アレルギー対応や人種、習慣の違いに制約されないことも大事な点で、そのためにはハラル対応(イスラムの教えに沿った食品としての認定)も必要になる。
どの子どもも分け隔てなく食べられるということが「私たちが考える理想の保存食です」と笠さんは言う。QRコードの利用で世界30ヶ国語にも対応しており、多様なルーツを持つ住民に対応しなくてはならない自治体ではとくに評価が高いという。
今後は「みんなの保存食」ブランドを充実させ、いずれは全ての保存食を10年保存にしたいという。     グリーンデザイン&コンサルティング 提供
今後は「みんなの保存食」ブランドを充実させ、いずれは全ての保存食を10年保存にしたいという。     グリーンデザイン&コンサルティング 提供
「こうした仕組みづくりに私たちだけでなく、他の保存食メーカーにも加わって欲しい。保存食業界全体で社会貢献に取り組むのが私の理想」と笠さんは語る。
海外展開にも意欲的だが、輸送費の高さがネックだという。「東日本大震災があったからこそ、保存食という概念は日本で広く浸透し、食品自体もおいしくなった。日本が経験して得たことを世界にも広く伝えていきたい」とJ-Storiesの取材に対して笠さんは語っている。
グリーンデザイン&コンサルティングが取り組むSDGsとは?     グリーンデザイン&コンサルティング YouTubeチャンネルより
記事:嵯峨崎文香 編集:北松克朗
トップ写真:グリーンデザイン&コンサルティング 提供
この記事に関するお問い合わせは、jstories@pacificbridge.jp にお寄せください。

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