J-STORIES ー 保育園児が本物の包丁で野菜を切り、魚を下す。煮物や揚げ物などの様々な料理を作って、大人たちにふるまうこともある。普通の家庭ではあまり見られない風景だが、そうした料理や後片付けを通じて子供たちに主体性を学ばせている保育園がある。
鹿児島県霧島市にある「ひより保育園」。経営者の古川理沙さんは、危ないものを危ないと教えながら使わせることで、子どもは慎重に対応することを体で覚えていくという考えだ。園内で使う包丁にもこだわり、洋食器や金物製品で知られる新潟県燕三条市にある会社と協力して大人も驚くほどの切れ味の良い子供用の包丁を作った。
もともとは言語学を専攻していた古川さんは、韓国と中国で8年間、日本語の教師をしていた。日本に帰国後、人々の食生活が半調理品に頼ってばかりいることに驚いた。日本人の生と食のつながりが希薄になっている、という危機感から、食を通じた教育の重要性に着目した。
「ひより保育園」に続いて、古川さんが2園目として開いた「そらのまちほいくえん」(鹿児島市天文館)は、「食を軸にコミュニティを自立させることが、持続可能な社会を作ることにつながる」という考えのもとに運営されている。
同園では、地域の人たちを招いたイベントを開き、隣に併設した総菜店には近所の高齢者らが立ち寄る。必要なものはなるべく近隣で購入する方針で、お使いに行く園児に町の人たちから声がかかる。地元の様々な人たちと接街に活気が生まれるとともに、子供たちは様々な人たちと接し、豊かな発想を育んでいく。
こうした「食育」は、「やってみたい」という子供たちの気持ちを大切に、生きる力を養っていく保育の一環だ、と古川さんはメディアのインタビューで語っている。
記事:澤田祐衣 編集:北松克朗
トップ写真:Hiyorihoikuen YouTube Channel
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