J-STORIES ー 自分の洋服にセルフクリーニング、消臭、抗菌など様々な機能を必要に応じて付与できる新しい加工技術の実用化が動き出している。すでに30以上の高機能を後加工で付けたり、除去したりすることができるようになった。さらに新たな機能を持つ次世代ウェアとして、天候に合わせた温度調整や着ている人の体調データの測定などができる洋服の開発についても研究が進んでいる。
この技術で洋服を加工すると、例えばなかなか落ちない醤油などのシミが、洋服を水に漬けるだけできれいになる。汗をかいても汗じみが目立たず、臭いもしない。白い服の透け防止もできる。同社によると、このほか抗ウイルス、UVカット、遮熱、冷感、べたつき軽減、帯電・毛玉防止など30を超すの機能を天然繊維や化学繊維など様々な繊維素材や製品(新品、古着)に付与できるという。
通常、生地にこれらの機能を付与しようとすると、多くのバインダー(結着材)を使用するため通気性が悪くなり、生地そのものが硬くなるという難点があった。しかし同社はバインダーを極限まで減らしたイオン結合による光触媒加工に成功。生地の風合いを生かしつつ、通気性や耐洗濯性にも優れた生地や洋服の製造が可能となった。
「毎日着る衣類の快適さを追求したらここにたどり着いた。世界中の誰もが毎日着用する洋服は、進化するテクノロジーによって無限の可能性が開ける」とCEOの鈴木さんは話す。
同社はさらに、社会の変化に即した技術開発の一環として、2019年から、信州大学繊維学部との共同研究で、免疫ケア、リラクゼーション効果や安眠効果が期待できるウェルネス衣服の開発も進めている。在宅勤務により家で過ごす時間が増えていることなどを踏まえ、衣服に心身を整える機能を持たせようという試みだ。
「脱炭素」に貢献する技術としては、気温の変化があっても快適に過ごせるカーボンネガティブ機能ウェアなどを開発し、それらを自治体の職員などにワンシーズン着用してもらったものを回収し、クリーニングや修理などを行い、翌年に再び着用してもらうという循環型のサービスを始める。導電性繊維を活用し、衣服内の温度や湿度、気流などをスマホで調整できる機能性ウェア、食品を温めたり、冷蔵保存できるテキスタイルの開発も考えている。
「これからの時代は、気温に合わせて洋服を選ぶのではなく、洋服そのものが天候に合わせて温度調節できるようになる」と鈴木さんは予想する。
同社はデジタルネットワークを活用した暮らしやすい都市づくり「スマートシティ」への対応も開発課題に掲げている。具体的には、導電性繊維による心電図計測やセンサーを内蔵し、着るだけで脳波や心拍数など身体データなどを計測、解析できる次世代ウェアの開発に取り組んでおり、オンライン医療などとの連携サービスなども可能になるとしている。
記事:大平誉子 編集:北松克朗
トップ写真:hap 提供
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