J-STORIES ー 第146位中第125位。 2023年に世界経済フォーラムが発表したジェンダーギャップ指数で、日本の順位は過去最低を記録し、政治分野に関しては、日本は138位で、ワースト10以内という不名誉な結果となった。数字的にみると、日本はG7および東アジアにおけるジェンダーギャップにおいて、最下位である。
このような日本の状況下で、職業における「男らしさ」「女らしさ」といったジェンダーバイアス(男女間の先入観)の解消を試みる展示会「キミのなりたいものっ展?with Barbie」が東京で開催された。
日本の商社・伊藤忠商事が玩具メーカー米国マテル社の日本法人であるマテル・インターナショナル株式会社とコラボレーションしたこの展覧会では、大統領、生物学者、消防士など、過去60年以上の歴史の中でバービー人形が挑戦してきた200以上の職業の中から厳選された約60の職業の衣装を着たバービーや、ケンの人形が、その職業の説明とともに展示された。
1959年のデビュー以来、バービーは女性を取り巻く環境の変化を反映して進化してきた。この展覧会は、「You can be anything (あなたは何にだってなれる)」というバービーのメッセージに啓発され、来場者が自分の可能性を制限することなく、自由に自分の未来を想像するように促すことを目的としている。
「女の子だから、男の子だから、は関係ない。それよりも大切なのは、自分のやりたいことをやることだ」マテル·インターナショナルの最高経営責任者(CEO)マーク・パンサール氏は、ワークショップに集まった15人の子供たちに対しこのように熱弁を振るった。
パンサール氏によれば、マテル社がドリーム·ギャップ·プロジェクトを2018年に開始して以来アメリカで行っている調査で、5歳から7歳の女の子は、同年齢の男の子に比べて自分は能力が低いと考えて夢をあきらめる傾向があることや、回答者の80%が「社長」は男性の仕事というイメージを持っていることなどが分かったという。
こうした根強く残る男女の考え方のギャップを踏まえ、今回開催された展示は、性別に関係なく職業は多様であり、「なりたいものになれる」という考えを様々な体験展示を通して学べるようになっている。
同展を企画したのは、伊藤忠商事Corporate Brand Initiativeの菰田(こもだ)有花氏だ。菰田氏は、日本のジェンダーギャップをテーマにした企画のパートナーにバービー人形を起用した理由について「バービーは2024年にデビュー65周年を迎えるが、デビュー以来、女性を取り巻く環境の変化を映しながら”You can be anything. =あなたは何にだってなれる”というメッセージを発信し続けているので今回パートナーとしてお迎えしました。250以上の職業に挑戦したバービーやケンの人形を実際に見ることで、子どもたちが夢の職業に就いている自分を想像しやすくなるから。」と説明した。
また、2022年時点で大手上場企業の役員に占める女性の割合が11.4%にとどまる日本では、展示をみることによって職業を具体的にイメージすることは特に重要なことだと主張する。
「私も以前は、女の子だからといって諦めなければならない夢があると無意識に思い込んでいたかもしれませんが、展示を通してこのような思いが無くなっていくといいなと思います」(菰田氏)
3カ月で終了する予定だった展覧会は、2週間延長された。さまざまな年代の人が関心を持つなど想定以上の反響があり、週末には来場者が500人を超えることもあった。その中でも特に印象的だったのは、就職を控える大学生の来場者が多かったことだという。「就活を考え始めているという大学生の方にも、自分がどうなりたいかを純粋に考えてもらえたのでは」と、菰田氏は語る。
バービーはこれまで、どちらかというと伝統的でステレオタイプな女性像を助長していると批判されてきたが、一方でマテル社は人類が初めて月面に着陸する(1969年)以前から宇宙飛行士のバービー人形を制作するなど、ファッションだけではない「多様性・ダイバーシティ(性別、人種、職業、体型など)」を意識し、時代の変化に合わせたジェンダーを表現してきた。菰田氏は「この展覧会が、子どもだけでなく大人も、ジェンダーバイアスにとらわれることなくキャリアについて考えることができるはずだと気づく 『きっかけ』になれば」と述べた。
翻訳:一色崇典 編集:前田利継
トップ写真:J-STORIES 撮影
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