J-STORIES ー 長崎県の大村湾は陸地に囲まれているため、海ではなく、まるで湖のようにも見える。色とりどりのガラスの粒がまかれた海岸は、陽が当たるときらきらと光って訪れた人々の目を和ませる。
この「ガラスの砂浜」は元々、観光客の呼び込みが目的ではなく、アサリを増やして同湾の水質改善を進めようという試みとして始まった。廃棄ガラスを使い、海の浄化と資源の再利用をめざす一石二鳥のアイデアでもある。
大村湾は外洋とつながっているものの、閉鎖的な水域で海水が行き来する部分が狭い。流れ込んだ生活排水が拡散しにくいため、植物プランクトンが大量に発生し、赤潮や酸素不足によって魚介類が減るという富栄養化の弊害が深刻化していた。
この対策として、長崎県環境保健研究センターは植物プランクトンを餌とする二枚貝の生育を促すことにし、周辺の海域に幼生が集まりやすいアサリに着目した。アサリの幼生が好む砂の粒子は1ミリ程度で、自然の泥砂では細かすぎる。同センターが思いついたのは、アサリが好む大きさのガラス粒を使った人工砂の活用だった。
人工砂をまいたところ、1年後に1平方メートル当たり約220個のアサリを確認。その5年後に約200メートルにわたって人工砂を敷き詰めた結果、翌年1月には1平方メートル当たり525個のアサリを確認できたという。
この事業を担当する同県地域環境課の立木和昭さんはJ-Storiesの取材に対し、「ガラスの人工砂浜を含め、下水処理の整備などの水質対策のおかげで(水質汚濁の指標の一つである)化学的酸素消費量(COD)の改善も見られ、良い傾向ではある」と指摘。しかし、基準値である2.0mg/L以下を安定的に保つことは難しく、「今後さらに改善が必要」と話している。
記事:澤田祐衣 編集:北松克朗
トップ写真:Yahoo Japan SDGs
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